カウンセリングを受けている男性と、兄を自殺で亡くした女性が主人公。男性は大学時代に短い間付き合っていた女性に、電話をかける。それもかなり唐突なことだった。そのため、電話を受けた女性は戸惑う。女性は人間関係を断って、生きてきた孤独で孤高な女性だったからだ。
かくして、男女は再会することになった。同じタバコを吸い、死について語り合う。男女はともに不器用で、不安定だった。男は睡眠薬を処方され、眠ることを日々の自殺と捉えていた。一方の女性は、男性を見るたびに自殺した兄を思い出した。それなのに、二人は再会してしまったのだ。これが恋愛なのか、友情なのか、それすらも分からないまま。
やがてつながりを持った二人は、穏やかな時間を過ごす。そして女性は、自分と男が似ていると感じ始める。
果たして、二人の行く末は――?
重いものを扱っているのに、空気感は穏やかで、それが危うい二人を如実に表現している。純文学の気配が十分に感じられる一作だ。
是非、御一読下さい。