吉川 緋小夜
心桜に頼まれて動画が配信されてすぐ、多くの地域や国から賛否両論の声が上がった。
「個人の自由を尊重するべき」「好きな事を好きと言えない国」「考えの古い時代は終わりにする良い機会」
「ルールはルールだから守れないならその学校にしなければ良いんじゃない?」「ひとつ許したら調子乗ってなんでもありになるからでしょ」「秩序を保つ為だから仕方が無くない?」
私は未だに
だから
そう言えば聞こえは良いかもしれないが、私はイルザが小さな時から知っていて、強い彼女が日本の学校に行った初日から泣き出し、私にあった事を全て伝えてくれた。
ドイツやアメリカで髪の色が違うからと、強制的に染めさせるなんて聞いたことがないし、そんな考えが思い浮かぶ事も考えられない。
それに加えて、日本を思うからこそこの問題を取り上げ、私は今まで国内だけで握り潰されてきた日本の現状を陽の光に当て、本当の強い日本を取り戻す為にこの行動に踏み切った。
賛否両論なんて当然だし、考えだって多種多様なのも分かっている。だからってその事を論じないなんて事は、所詮逃げて先延ばしにしているだけに過ぎない。
広く浅くを続ける日本の教育に、終止符を打つべく、今起きている問題を解決しなければいけない。
与えられた常識が本当に正しいのか、それが唯の自慰行為になっていないのか、下らないマスターベーションなら、それに付き合う道理は無い。
「どうだった心桜、日本のお偉いさんは大忙しだろうな」
「まぁ、良いんじゃない。今まで溜まってたツケが回ってきただけだし、退学になったからもう世間を気にせずに好き勝手出来る。これでも考えを改めなかったら、次はテロだな」
「テロなんて効率が悪いだろ、あくまでも善人として世論の同情を集めないと改革は難しいだろ」
「元軍人さんが弱気だな、このお国のために死ぬのが本望とか古い考えじゃないのか?」
「この国の為に? そんなのまっぴらだな、腐り切ってるよこの国は。人の働きは凄い、能力だけは世界レベルだがな。だがそれだけでは生き残れる可能性は少ない、こんな国の為に死ぬくらいならと思ってイルザの下に来たんだ」
2人でパソコンの置いてある暗い部屋で話し合っていると、ドアがノックされる。
それを聞いて素早く心桜が闇に身を隠し、少しだけ顔を覗かせたイルザが、暗い部屋を少し怯えるように見る。
黒くなってしまった頭を撫でてやると、小動物の様に少し下を向いて目を閉じる。
「じゃなくて、電気点けないと目悪くするよ」
「あぁ、ありがとなイルザ。それで用があったんだろ?」
「あっ、別に大した事じゃないよ。部屋の前を通ったら声が聞こえたから、いつも聞かないようなちょっと怖い声だったから大丈夫かなって思って。でも緋小夜は心配無用だったね、強い人だから」
「大丈夫だよイルザ、もう寝る時間じゃないか? お母様とお父様にお休みの挨拶をして来たらどうだ」
「もうしてきたよ、お休みのハグはあと緋小夜だけだから。だから、はい」
手を広げたイルザの腰に手を回して抱きしめ、なかなか満足しないイルザに暫く拘束される。
匂いを付ける様に頬を擦り付けててくるイルザは、名残惜しそうに体を離して、一瞬止まって自分の部屋に歩き始める。
「学校と違って随分と可愛らしい子だな、家ではあんな感じなのか?」
「手出したら殺すぞクソガキ、あの子は私が
「冗談はよせ、少なくとも同じドイツ人とはお断りだ」
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