降魔 心桜

兎に角理解が出来なかった、分からなかったから興味が湧いた。知れば知る程しりたい事が増えていって、知らない物が増えていった。

そうして知っていく内に、気付けば高校を入学してからは殆どの事を知っていた。


そして見たくないものばかりが見えるようになって、見たいものばかりが周りに溢れる様になった。

今の日本の現状は相当に酷い惨状で、言いたい事は底を尽くことが無かった。


それでも伝えようとしても伝わらず、少し考え方が違うだけで変人と言われた。


「あっ、中二病だ」


「おい、中二病ってのは造語だ。それも人を批判する事に関しては得意な日本人が作った、人を貶める最低の言葉だ。そもそもお前たちの知識の足りなさが生んだ劣等感だろ、それだから人を否定する事しか出来ない逃げ道にそう言うんだろ?」


「理屈とかいいから、また変な事言い出したしそんなのどうでも良い」


そう言って相手にもせずに歩き去ったやつを憐れみながら、逃げた背中を見送る。

いじめ防止強化月間と呼ばれるただの大人の自己満足に、やっている感を出したいだけの集会の為に体育館に全校生徒が入る。


学校長の長い話も佳境に入る頃、俺は自分の座っていた列を飛び出し、学校長からマイクを奪い取って壇上から全校生徒を見下ろす。

この学校の行ういじめ防止強化月間を推奨してしまったが為、出席しなければいけなくなった文部省の男を確認して、止めに入る教師を目で黙らせる。


「よく聞け蛆虫共うじむしども。特に考えが古い頭の硬い国のお偉いさんと、他人の好きなものや、未知の考えをはなから否定する事しか出来ない臆病者だ」


「おい降魔ごうままたお前か! 次は謹慎だって言った……」


「黙ってろ! 生まれた国とか瞳の色や、ただ好きなものや考えが違うだけで、その人の何が分かるって言うんだ! 自分の狭い世界で生きるのに精一杯だからって、他人の世界を否定してんじゃねーよ!」


「何を変な事を言ってる降魔! お前は兎に角生徒指導室に来い!」


「触んじゃねーよ! 何が不満なんだよ、イルザの髪の色が変わってんだろ。昨日まで生まれつきのブロンドだったのに、勉強に支障が出るとか根拠のねーこと言ってんじゃねーよ! 髪の色が違うだけで、黒くしただけで人が賢くなんのかよ! 何度言っても明確な答え戻せねーならものを知った風にふんぞり返って語るんじゃねーよ、人間なんて足りねーもんばっかだよ、それを1人に求めんじゃねー! テメーらみたいな自分勝手な大人が1番嫌いだ、個人を殺してまで大勢を従わせるなんてやり方がまかり通る国なら、テメーらがいつか報われる事を信じて死んでやるよ!」


生徒指導主任の教師に引き摺られながら壇上から引きずり下ろされ、それに逆らおうとして足に力を入れて床を滑る。


「イルザ、明日から髪の色を元に戻してこい! 晴、お前が大きな声で喋れなくなったら俺が一緒に大きな声で喋ってやる。唯聖、お前は正直になって自分らしく生きろ。そんでそれを否定する事しか出来ない糞野郎共、飽きもせずに陰口叩いてねーで文句あるなら、話がしてーなら顔見せて正面から来いよ!」


「お前分かってるだろうな、こんな事したら退学だぞ」


全体重を支えていた足から力を抜いて地面に倒れ込み、一緒に倒れた生徒指導主任の腕を振り解く。


「来いイルザ、晴、唯聖。他に不満があるやつもこい、これがこの小さな国の世界だ。器量度量何もかも小さな世界だ、聞いたか文部省の老いぼれ、本当の教育を想ってるなら考え方を改めろ。縛って良い権利なんて認められるか、お前たちの好きにはもうさせないからな。これは今全国に配信されてる、全員同じ服着た同じような髪型の気持ち悪い集団がな」

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