師匠

 条件 天才の行方 などのグラス商会と天才の関係を変更する必要がある。


 条件 師匠と天才の関係を修正。



前置き


 妖精の木 が庶民へ娯楽としての妖精飼いを広めた事で、妖精飼いの産業は急速に発展した。


 以前からも妖精を飼う庶民は居たが、産業を目的とした飼育ではなく、娯楽で飼う者の殆どは富裕層だった。



ここから



 数か月前……。


 昔から殆ど変わらない物(変化を求められない)を作り続ける、誰にでも出来る労働をさせられて、他者から自分を特別に求められた事が無かった少年は、自分の価値を見出せず退屈な日々を送っていた。


 伝統を尊重すると主張して唯々、変化を望まない者たちを「思考を放棄している」と見なす、少年は幾度か「改善すべき箇所」を意見したが、変わらずとも危険が無い環境に置かれたと判断している者たちは「不要だ」と聞く耳を持たなかった。


「価値が無いと人は動かない」それは彼らが、「今に危険性が無く変えて得られる何かが魅力的では無い」から「容易な事」でも面倒に思えるのだと少年は考察した。


 「何が魅力的に映るか」は人それぞれ異なる、貧困で貧乏に苦しむ者はお金を魅力的と考えるが、お金で困っていない者はお金は大切だが貧乏人ほどの魅力を感じていない様に感じる。


 自分の主張を通すには、通したい主張を魅力的にする必要があると考えた少年は影響力が強い者が欲する何かを探り、得られると思わせて必要性を見出させようと試みた。




 数年後……。




 工場の変化に気付いた妖精飼い用の道具を販売するグラス商会の社長が変化を起こした青年の人を動かす才能に目を付けて引き抜こうとした。


 広い世界に行って学べば、今以上の自由を得られると考えた青年Zグラス商会に入社した。


 工場には意欲が高い者が殆どいなくて疎外感を感じていた青年Zは意欲的なグラス社長の誘いを受けた。




 青年へ妖精を教えていたグラス社長は、経営者ではなく妖精飼いを牽引する存在に成ると考えて、経営者より独立させて産業を活性化させる方向へ転換した。




 グラス社長から気に入られていた青年は、グラス社長の息子から青年が次期社長と思われて、血の繋がる自分が会社を継げない可能性に強い不満を抱いて恨まれて敵視された。次期社長候補だったから間違いではなかった。


 息子以上にグラス社長から期待されていた青年は邪推される事も多かったが、逆に擦り寄られる事もあった青年は、独立する方針を早々に主張して社員や子息の危機感を排除したかったが、独立を育てた恩師草社長への裏切りと思われたら独立の予定に支障を来すと考えて、嫌われる決意を固めた。




 グラス社長の実家に住み込みで修行する青年は、子息夫婦の規制に同行していると何度か交流が有り、一般的に軽視されがちな妖精の知識を教えていた。


 から「師匠」と尊敬されて気に入られた青年は教え子を持つ楽しさを知った。




 数年後……。




 独立後、企画や知恵を盗まれて仕事仲間に裏切られた青年は他者に知られる危険性に気付いて、情報を制御する重要性を再確認した。


 師匠草社長の下に居た時は、社内で強い影響力がある草社長に守られていたから危険が無くて、工場に勤めていた頃は工場内が自分の世界と等しくて、その中で認められていたから、外の目から受ける自分の評価を気にしていなかった。


 技術的、知識的な「能力」の把握より「人格」の把握が重要だと考えた青年は人を注意深く観察するようになった。


 情報を安易に与えぬ様に注意し始めてから裏切れない状況を作れるようになり自分の価値を高められた。



 十数年後……。



 師匠草社長が死に社長を継いでいた子息ではなく、へ妖精町計画に出資して欲しいと中年は提案していた。


 社長ではなく、社長の息子で影響力が強い社員に提案した中年の意図は、子息が社長に成った今でも、後継者に成る可能性が有った事で敵視され続けて、独立してグラス商会以外と仕事をした事を裏切りだと思われて、心象が悪い社長より、影響力が有り次の社長に認められる為に、成果が欲しいの方が説得しやすいと考えた。


 妖精町の必要性と、出資による貢献で妖精飼い産業内の地位を向上できるなどと価値を主張して社長を説得した社員は出資させる事に成功してグラス商会が行う妖精町事業の中心を社長から任された。




 中年Zはお金持ち、会社、市政へ妖精町の価値を説いて妖精町の社会的価値を高めて、市政などで計画を検討させた。




 数か月後……。




 数世紀ほど前から姿を現さない妖精の価値は高く、妖精で自尊心を高めている富裕層には格好の餌だった。


 希少性が最高位の妖精を呼んで短期間だが飼う計画を実現できると思わせるために、高位の妖精を飼うことで期待を抱かせて妖精町へ投資させた


 最高位の妖精を呼ぶ方法は隠す必要があり、秘密主義な中年へ不信感を抱く者がいた。


 不信感を取り払うために手法を話すと、自分だから出来る理由が無くなり、望んだ妖精町が出来ない可能性を危惧している。


 他には数世紀前に常人が滅ぼした獣人社会の宗教を参考していると常人たちに知られたら、常人至上主義の者たちから非難されて活動しづらくなる。最悪、生きづらくなる。


 不信感を抱くものには無理にお願いせず、最高位の妖精を呼ぶ以外の妖精町を作る利点を説いて、やる気がある者を増やして、不信感を抱く者たちが疎外感を抱いて自ら協力的になるように仕向けた。




 数年~十数年後……。 巨大な町が出来る期間を知らないから範囲が広い。




 妖精町は完成して、目玉の最高位妖精を呼び数週間の滞在に成功した中年Zは妖精を飼うことに関しては最高の信用を得て、秘密主義でも妖精飼いの仕事が来て、妖精町内で強い影響力を持った。


 お金を貯める価値がない中年は、自己資産が無くても、妖精を飼いたいときに、誰かに投資させる方法で、妖精を飼っているから、給料を安くして妖精に回している。


 給料の大半は貯めずに使っているから資産は少なく、住まいは妖精町の庶民的な家で暮らしている。未婚で子供もいない。有名になってからお金を求められて、面倒になった中年はお金がない状況を作って、家族に答えられない状況を作り、面倒ごとを回避している。




 数年後……。


 中年は作業中に事故死して、最高位妖精を呼ぶ計画の第二弾は中止された。

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