第3話 真夜中のお茶会

 エクレイ前提のプロエクもどきなので、地雷の方はお気をつけください。











 「こんなところに呼び出しておいて、何のようですか?」

 大きく、それでいて小さなテーブルの向こう側、静かにカップを啜る彼にエクスがそう問いかければ、彼はことりとカップを置き、視線を合わせた。

 昏く瞬く赤い瞳、白髪の混じる青緑の髪色。その表情はまるで氷のように冷たい。みんなは僕のことを優しいだとかお人好しだとかいうけれど、こんな表情をするやつのどこが善人なんだと、一人心の中で自嘲の笑みを浮かべる。

 プロメテウス。もう一人の、僕。僕の、可能性の、その一つ。

 「用がなければ、呼んではいけないのかい?」

  「......いえ、別に」

 そう言って目の前にあるカップを口元に運ぶ。

 カップに注がれた紅茶は、虚無を纏う彼の見た目に反して、甘く控えめな味だった。食事の必要性もなければ、感覚の欠落したその体では味なんてほとんど感じられないはずなのに、それでも彼がこんな食事の真似事をするのは、やはり”彼女”の影響が大きいのだろうか。

 「君も変わったな。最初の頃は、席にすら着いてくれなかったというのに」

 「あなたとどれだけいたと思ってるんですか。それにこう何日も呼び出されれば、慣れますよ」

 慣れたというより、”慣らされた”に近いけれど。

 彼の魂胆は、だいたい分かる。僕に心の隙さえあれば、僕の体を再び奪い、月の導きとやらに従おうというのだろう。

 でもなければ、彼が僕の夢に毎晩現れて、こんな嫌がらせ紛いのことするだなんて、無駄なことをするわけないのだ。

 でも、もうそんなことはどうでもいい。確かに最初は、嫌悪も憎悪もあった。けれど、僕が彼を抑え込んでいる以上、彼はなにも出来ない。所詮は、僕の可能性の一つでしかないのだから、僕が折れなければ彼は沈黙の霧のように曖昧で不確かな、まるで夢のような存在に過ぎないのだ。

 それこそ、僕が今見ているみたいに。

 「それは違うな。君は見ているんじゃない。見させられているんだよ」

 クスクスと、僕の顔をした彼がさもおかそうに笑う。

 「これは君の夢だけれども、それと同時に僕の夢でもあるんだよ。だから、」

 彼はそこで言葉を切り、パチン、と指を鳴らした。その瞬間、周りの景色が一変する。

沈黙の霧のような真っ白な霧が晴れ、目の前のテーブルやイスはいつのまにかかき消えていた。

 霧が晴れて、現れたそこは森の中。遠くには豆の木が見え、ほとんど崩壊した大きな城がそびえ立つ、見覚えのある、忌まわしい、あの。

 「......なんのつもりですか。あの日のことなら、この100年で何回も」

 「うん、だからね、少しだけやり方を変えてみることにしたんだよ」

 そう言うと、彼はぐいっと僕の胸元を掴んで距離を詰めた。

 「さぁ、また耐えて見せてよ。王子様?」

 まるで嘲笑うかのようにそう言って、彼は森の闇へと姿を消した。

 途端、後ろで微かな物音がした。その音に振り返って、僕は彼の言ったことを正しく理解する。

 あぁ、彼はどうやら本格的に僕を潰しに来たらしい。確かに、僕相手には彼自身より、彼女のほうが適任なんだろう。彼も、随分と意地が悪い。


 ーーー振り返ったその先、そこにいたのは片手に剣を持ち、濁った瞳をした、金髪の美しい少女だった。


















気力が尽きました。もう書けません。でも、エクスくんとプロメが殺伐と殺し合いするより、こっちの方がメンタル削れるし、計算高いプロメはこれくらはしてきそうだなーと思うんですよね。

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