第9話
奥野武志たちは病院の前のテント村の中心に来た。
「はーい、いらっしゃい。並?大盛?」
白衣のナースが奥野武志に聞いてきた。
「うーん、ああ、腹減ったな。食ってくか?」
奥野武志はみんなに言った。
「おお、俺も腹減った。食おう」
「まあ、いいわよ」
みんなは賛同した。
「じゃ、まあ、並でお願いします」
奥野武志が言う。
「はーい、八名様ご案内でーす」
奥野武志たちはナースに連れられて緑のテントに入っていった。
そして寝台に仰向けになって血を抜かれる。
献血をした。
この国では輸血する血がまったく足りない。
「はーい、ご苦労さまでした。それではこちらでお召し上がりください」
隣のテントに行くと、そこは焼肉が食べられる食堂になっていた。
テーブルの上には小型のガスグリルが置いてある。
奥野武志たちは二つのグリルを囲んで席に付いた。
「はい、並のお客様」
ウエイターが肉の乗った皿を持ってくる。
「はい、ご飯でーす。おかわりは自由になってます」
ウエイトレスがご飯の入った茶碗を持ってくる。
「いただきまーす」
一同は肉を焼き始めた。
この国の一般人は週に一回は病院で焼肉を食べる。
血の売買、臓器売買は違法だ。
だから、金のやり取りは無いが食事が出されるのである。
この行為は人間の養殖場と海外のある団体からは批判されている。
まあしかし、背に腹はかえられないのである。
「あれ?シンディちゃんは血なんて抜いちゃって大丈夫なの?」
加藤が言った。
「ちょっとクラクラします」
シンディが言った。
「駄目じゃーん。ほら、肉を沢山食べて」
モツを焼きながらふと、
「シンディはどこが悪いの?」
とマサカズが聞いた。
「ハート」
シンディが恥ずかしそうに言う。
「あんたねえ」
美紀がジロリとマサカズを睨む。
「え、俺?ってそうか。ごめん」
マサカズは美紀がなぜ怒っているのがわからないが、一応謝っておく。
「シンディちゃん、おっぱい大きいね。サイズは?」
ジャキ、チャキ、チャカ、チャキンと銃口がキャップに向けられた。
「あら?死にたいの?」
メガネの銃口がキャップの脇腹に押し当てられている。
「ごめん、冗談だって」
キャップは苦笑いをした。
「あんたねえ、最低」
メガネは頬を膨らませている。
「まあまあ、プライベートに踏み込むのは無しって事なのね。わかるよ。わかる」
加藤がとりなす。
キャップの命がけの教訓であった。
マサカズは分かってくれたのか。
「おいおい、飯時に命がけの冗談を言うんじゃないよ」
高木が少し笑って言った。
ふざける者がたまに殺されることもある。
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