第10話
奥野武志たちが看護婦に教えられた緑色のテントに入ると、十人ほどの怪我人が居た。
マキマキはベッドに座っていた。
「マキ」
メガネがマキマキに駆け寄る。
「あれ?皆さんお揃いで。わざわざすみませんのう」
マキマキが笑いながら言う。
「お前、死んだと思ってたけど、元気そうだな?」
マサカズが言った。
「うん、血が出たけど、内臓はまあ大丈夫だったから。肺がちょっと傷ついたみたい」
「で、誰にやられたんだよ」
高木がマキマキの隣に座って言った。
「わからない」
マキマキは悔しそうに下を向いた。
「ハンターだろう」
奥野武志が言った。
「俺もそう思う。内臓が傷ついてないしな。きれいな傷で殺すとかハンターにしかできねえ」
キャップが言った。
「まあ、急ぎの入用があったって事ね。災難だったわ。じゃ、帰ろうかな」
マキマキが言った。
「もう良いの?」
高木が聞いた。
「大丈夫だから」
マキマキはそう言うとフラフラと立ち上がった。
ハンターとは、雇われて人間を狩る者の呼び名だ。
狙った人物に致命傷を負わすのが彼等の仕事だ。
致命傷を負った者は病院に運ばれる。
そこで運が悪ければ死に、その臓器が臓器移植に使われる事になる。
ハンターは正体をかくして生活している暗殺者だ。
雇い主はすぐに臓器移植が必要な金持ちの病人である。
「で、こちらのお方は?」
マキマキがシンディを見て言った。
「ああ、病院見学のシンディ」
マサカズが言う。
「ふーん。残念だったわね」
にこりとしてマキマキはシンディに言った。
シンディは何を言われているのかわからないという顔つきをしている。
シンディは日本語がわからないのだ。
「グッバイシンディちゃん」
加藤はシンディと連絡先を交換していた。
シンディをホテルの入り口まで送りとどける。
それから奥野武志たちは家に帰った。
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