第2話

 拳銃所持が合法化になって数日後。

 奥野家では家族会議が開かれた。


「まず、拳銃を買いにいこう」

 父親が言った。


 今まで帯剣して生活していたのだが、時代は拳銃なのだと、奥野家父はここ数日で痛感していた。


「うんうん、私も拳銃が欲しい」

 

 奥野家の娘。

 彼女の友達はもう拳銃を持って学校に来ている。

 流行に遅れたくない一心である。


「嫌ですよ。私は」

 

 奥野家の母。

 殺伐としたこの国に辟易としている。

 拳銃所持が合法になって、更にうんざりである。

 海外移住に憧れている主婦である。

 

「買ってくれるのか!」

 

 そして息子。

 奥野武志。



 土曜日。


 父親はデパートまで拳銃を買いに行った。

 父親は夜に帰ってきた。

 ゴト、と一丁の拳銃を居間のテーブルに置いた。

 それを見守る家族。


 なぜテーブルに置かれた拳銃は一丁だけなのか?


「所持する本人がサインをしないと売ってくれないらしい。明日、みんなで行くか」

 父親が言った。


 日曜日。


 奥野家はみんなでデパートに出かけた。

 拳銃を買うために一日中並んでいた。

 拳銃を求める大勢の人。

 拳銃フィーバーである。

 

 拳銃は買えた。


 帰りにデパートのレストランで食事をした。

 そこで遠くの席から怒鳴り声が聞こえてきた。


「なんだこの飯は。殺すぞこの野郎。殺人無罪だよこの国は。ああーん?」

 

 パン。


 レストランの店員が拳銃を取り出し、騒いでいたチンピラ風の男を撃った。

 体を折って崩れ落ちる男。


 パンパンパン。


 店員にとどめをさされたチンピラ風の男は床に倒れて動かない。


「お騒がせをして大変失礼しました。どうぞごゆっくり」


 店内を見回し店員が頭を下げる。

 

 撃たれた男は店員に引きずられて店の外に連れて行かれた。

 静まった店内に話し声が戻ってくる。


 「人を脅すなんて馬鹿な男だ」


 その場に居た人々は全員がそう思っていた。

 

 それにしても拳銃があると、問題解決のなんと早いことか。

 刀の時代は終わった。


 拳銃の時代が来たのだ。

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