第4話

王都ではパレードは無かった、正式な王への謁見も無かった

馬車は城の裏門から入り裏口を通り謁見の間に連れて行かれた

謁見の間では王と宰相そして騎士団がシロとアヤカを囲む

聖母に教えられた謁見での作法もそこそこに矢継ぎ早に質問される


Q:この世界へどうやって来たか


Q:この世界に来た理由


Q:何者であるか


Q:元の世界では何をしていたか


Q:この世界で何ができるのか


Q:この世界で何がやりたいのか


Q:この世界をどう思うか


Q:この世界をどうしたいのか


Q:邪神をどう思うか


Q:邪神は倒せるのか


Q:邪神は封印できるのか


以下、トータル100問の質問攻めにあう

シロは生真面目である、邪神封印に関係がない質問にもハキハキと答える

しかし、女性経験についてはアヤカの方をチラリとみてから”いいえ”と答えていた

アヤカな馬鹿馬鹿しく感じたのだが権力者相手であるのでそれなりに答えた

しかし答えたくない質問には答えない、権力者相手でも譲れないものがあるのだ

質問タイムの後は披露宴が催された、勇者と聖女を披露する宴ではなかった

王城に内々に集められた紳士淑女を勇者と聖女へ紹介する宴である

シロには公爵の令嬢の次は侯爵の令嬢その次は伯爵の令嬢が紹介される

御令嬢はシロを持て囃す、シロはモッテモテでご満悦である

アヤカには公爵の令息の次は侯爵の令息その次は伯爵の令息が紹介される

御令息はアヤカを褒め称える、しかしアヤカはシロを見て不機嫌である



「何としても、勇者の子を孕め」


「父上、巫女の方はどうしますか?」


「邪魔をさせるな、孕ませられるなら孕ませろ」


「いいね、燃えるよ」


父上と呼ばれたこの国の王が下卑た笑みを浮かべる

王の執務室に7人の男女、王と3人の王子と3人の王女である

居並ぶ3人の王子達も品のない笑みを浮かべている

3人の王女は戸惑いの色を隠しきれない、しかし王様の命令は絶対である

第一王女は最年少の第三王女ををチラリと横目で見るみる

腹違いだが可愛い妹である、まだ胸の膨らみかけた成人前のあどけない少女

しかし、王は気にも留めない勇者の血を王家に入れる事こそが重要と考える

王はグラスの向こうに王国の未来を眺める



王城での滞在も一月ほどであり王城では戦い方を学ぶ、剣と魔法である

剣は騎士団に混ざり訓練を行う、騎士団の剣術指南役に剣を教わる

元の世界では剣道もやった事がないシロであったがあっという間に免許皆伝である

しかし、これは勇者補正と女神の加護の力のおかげであるとシロは理解している

シロが剣技の授業の間は、アヤカは錬金術の授業の時間である

調合と精錬と生成を教わる、大賢者によって錬金術の奥義を習う

アヤカは化学と料理が元々好きだったので加護の力もあるが難なく受け入れられた

材料さえあれば不死の妙薬も作れるかもしれない

魔法の授業はシロとアヤカの2人一緒に大魔導士から教えを受ける

賢者は爺さんであったが、大魔導士は妖艶な悪魔的な美女であった

光と闇の根源魔法と地水火風の四大魔法と雷冷熱金木の複合魔法を教わる

大魔導士はアヤカは優等生でシロは劣等生と評価する、シロは毎日補習授業である

アヤカも一緒に補習授業を受けたいと希望するが妖しく笑う大魔導士に断られる



「勇者はどうじゃった?」


「そうね~、いいんじゃな~い?」


「そうかそうか、お盛んじゃな…とても同い年とは思えんわい」


「うふふ」


「それで種は分けてもらえるんじゃろうな?」


「構わないけど~、安くはないわよ~?」


シロが補習から帰った後の大魔導士の部屋、下着を身に着け服装を整える女性の姿

長い髭を撫でながら大賢者が大魔導士に声を掛ける

大賢者は勇者の種を何に使おうかと思いを巡らせている

数々の薬品のレシピを思い出し、どのように使うべきかと考える

薬効を上げるために使うか、それとも新薬の開発か…ほっほっほっと愉快に笑う

大魔導士は密閉した小瓶の中に入れた勇者の種を日に透かして眺めている

どんなキメラを作ろうかしらと考える、勇者の力を持つキメラの姿を想像する

ゾクゾクと身体を震わせて妖しく笑う



夕食後は自由時間であるが自由な時間ではない

シロの部屋には第一王女から順番に3王女が毎日やってくる

3王女の後には披露宴で紹介された御令嬢が順番に一日交替でやってくる

その後には王家で働く使用人が代わる代わるやってくる、まさに渇く暇もない

シロは自分を子種袋としか見ていない王家や貴族に対して不満を漏らし始める

思えばこの辺りからシロが壊れてきたのかもしれない

いや、既に壊れていたのかもしれない


アヤカの部屋にも第一王子から順番に3王子が毎日やってくる

3王子の後には披露宴で紹介された御令息が順番に一日交代でやってくる

その後には王家で働く使用人が代わる代わるやってくる、もはや寝室には居られない

アヤカは夕食後からはシロの部屋に逃げ込むことも出来ない程の逃走劇が始まる

あらゆる知識と魔法を駆使してどんな手を使っても己の貞操を守りきる

屋根に屋根裏に煙突に

床下に地下室に軒下に

壁の隅に天井に人の陰に

木の陰に藪の陰に草の陰に

樽の中に木箱の中に井戸の中に

カーテンの裏に家具の裏に扉の裏に

思いつくままあらゆる手段を使い逃走する

そしてアヤカは見事一月逃げ延びるのである

後半は城から出て町の宿屋に泊まることで逃げ切ったのだが

とにかく逃げ切り貞操を守り切った

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