第3話

透けた薄絹のヴェール、肌が浮き出る程に透けた薄絹を身に纏う金の瞳の女性

本物の女神よりも女神像に近い清楚な佇まいでシロの前に跪き胸の前で手を組み祈る


「ようこそいらっしゃいました、勇者様と聖女様で御座いますね」


「あなたは?」


「わたくしは女神様より信託を頂いた勇者様の傍女に御座います」


アヤカの眉がピクリと跳ねる

そんなアヤカの反応を知ってか知らずか聖母がシロの手を取り祝詞を唱える


”喜ばれし時 喜ばれし日 喜ばれし月 喜ばれし年 皇子の降臨を見よ”

”天上の神々に祝福されし者 現世の王の中の皇 真皇に歓喜の歌を捧げよ”

”聖翼の中の子等に祝福を 聖光の中の子等に安寧を”


シロは驚いて手を振り払いそうになるが聖母の暖かさと柔らかさに触れて手を預ける

手を繋いでいると聖母から暖かい何かが流れ込んでくる、体が心が満たされてくる

シロには母親がいない、小さなころに病気で亡くなったと父親に聞かされていた

聖母はシロの母親とするには年若き女性であるが

もしかしたら何処かに亡き母親の面影を重ねているのかもしれない


世界が優しく輝き柔らかい光のオーブが幾百と浮かび消えてゆく

シロは目を輝かせ光のショーを楽しむ、世界の優しさを魂に感じる


大聖堂に滞在したのは一月ほどであり神聖魔法と神学とこの世界について学んだ

神聖魔法は神の奇跡である、信仰無くして発現しない

しかし、シロもアヤカも信仰とは無縁であったのだが難なく発現することができた

勇者と聖女の肩書は伊達ではないのかもしれない

神学は退屈な授業である、神が如何に素晴らしいかの賛辞ばかりである

実際に女神にあったアヤカには賛美の内容に異議ありである

邪神に関する資料も記録も無く、神話すらなかった…隠しているだけかもしれないが

この世界についての授業も教会側から見た偏った世界のようにシロとアヤカは感じた


聖母はシロのよき教師でありよき従者であった、

朝の仕度から夜の伽まで献身的にこなす、シロも最初は拒んでいたが聖母に絆された

柔らかい肌に暖かい体、20代後半の熟れ始めた果実の柔らかさをシロは貪る

一時は聖母に溺れたシロであるが聖母がそれを良しとせず窘める事で自立を促した

逆にアヤカは処女性が失われると神聖魔法が使えなくなると、乙女の誓いを迫られる

この邪神封印の旅の間に既成事実を作りたいアヤカではあるが渋々誓いを受け入れる

大聖堂での過程と課程の成績の良い2人は次の目的地である王都に送られる



「どうであった?」


「はい法皇様、皇子の種はこちらに御座います」


シロとアヤカが召喚された部屋の真下にある法皇の執務室に聖母の姿がある

伏し目がちに自らの下腹部を愛おしそうに撫でる姿を見て法皇も安堵する

女神より遣わされた勇者の種を確保することは教会の責務であると考えている

皇子の誕生は神との繋がりの証であり信仰の象徴となる

法皇はほくそ笑む、教会の未来と自分の未来を重ねて

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