張飛3&ハイチュー 巌顔

劉備りゅうびしょく入りして劉璋りゅうしょうを攻めたとき、

はじめ荊州けいしゅうに詰めていた

張飛ちょうひ諸葛亮しょかつりょうも、後のことを関羽かんうに任せ

長江ちょうこうを遡上、蜀入りし、

蜀の各郡各県を支配下に収めた。


蜀の出入り口、

江州こうしゅう郡に攻め込んだとき、

張飛、劉璋の配下武将である

厳顔げんがんを破り、捕獲。


縛られた厳顔に、張飛が怒鳴る。


「わしらに勝ち目なんぞなかったろうに、

 何ぞ無謀な抵抗をしよったんじゃ!」


厳顔は落ち着き払って答えた。


「そなたらの名分なき侵略に対して、

 儂らの州には、

 首を斬られる覚悟のある将のみがおる。

 投降する気持ちを抱く将などおらぬ」


この発言に、張飛激怒。

周りのやつに連行させて、

首を切らせようとした。


すると引っ立てられた厳顔、

相変わらずの落ち着き払った面持ちで


「とっととお斬りになれば

 よろしかろうに、

 何をいちいち怒っておられるのか!」


この態度に張飛、厳顔やべえ、と思った。

戒めを解き、宴席へと引き連れ、

改めて賓客としてもてなすのだった。


 ○


張飛伝、特に言うことないんすよねー。

ただ、ここには補足しとくっす。

出典は「華陽国志かようこくし」っすよ。


はじめ劉備が攻めてきたとき、蜀軍、

抵抗らしい抵抗もなく、あっさりと

厳顔のところにまで侵攻を許したっす。


そいつを見て厳顔、胸元で拳を握り、

「儂ひとりに、この狭い山で、

 放たれた虎から山を守れと申すか!」

って叫んだそうっすよ。


クソどもに囲まれ、それでもなお厳顔、

義を貫き通したんすね。




先主入益州,還攻劉璋,飛與諸葛亮等溯流而上,分定郡縣。至江州,破璋將巴郡太守嚴顏,生獲顏。飛呵顏曰:「大軍至,何以不降而敢拒戰?」顏答曰:「卿等無狀,侵奪我州,我州但有斷頭將軍,無有降將軍也。」飛怒,令左右牽去斫頭,顏色不變,曰:「斫頭便斫頭,何為怒邪!」飛壯而釋之,引為賓客。


《華陽國志》曰:初,先主入蜀,至巴郡,顏拊心歎曰:「此所謂獨坐窮山,放虎自衛也!」



先主の益州に入れるに、還りて劉璋を攻め、飛と諸葛亮らは流れを溯りて上り、分かたりて郡縣を定む。江州に至り、璋の將の巴郡太守の嚴顏を破り、生きて顏を獲う。飛は顏に呵して曰く:「大軍の至れるに、何をか以て降らず敢えて拒戰したるか?」と。顏は答えて曰く:「卿等に狀無し、我が州を侵して奪わるらば、我が州にては但だ頭を斷たるる將軍を有し、降りたる將軍は有さる無きなり」と。飛は怒り、左右をして牽き去りて頭を斫らしめんとせば、顏が色は變わらず、曰く:「頭を斫らんとせば便ち頭を斫りたるべし、何ぞ怒れるを為さんや!」と。飛は壯として之を釋し、引きて賓客と為す。


《華陽國志》に曰く:初にして、先主の蜀に入れるに、巴郡に至るれば、顏は心に拊して歎じて曰く:「此れの謂わるる所、獨ち窮山に坐し、放たるる虎より自らを衛りたるなり!」と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る