聖夜

 12月24日。街は賑わう。彼らはどこまで知り、どこまで祝っているのだろうか。

「主」、イエスキリストの降誕日を。


 一説によると、イエスがこの世に生を受けたのは少なくとも12月ではないとも言われている。しかし、楽しむ彼らにとっては瑣末なことだろう。


 この街の空気は、その日は幾許か軽くなる。多くの者が、数多の苦悩を忘れて楽しもうとするからかもしれない。……そう考えれば、ナザレのイエスもいまだ救世主であるとも言える。




 ……教会の扉が開いている。磔の男が項垂れている。


 神を信じていない人間にとって。今もなお崇められるその男はいったい「何」になるだろう?


 弟子に裏切られ、石を投げられ、十字架を担いでゴルゴタの丘で非業の死を遂げたただの人間だったことになるのだとしたら、




 何人、似たような「異端」がいたことだろう。




「……お前は、運が良かったな」



 穢れたままの異端者は、死後に救済された2000年前の男を妬み、冒涜するように吐き捨てた。

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