第8話 冴えない幼なじみの育てかた


「話、聞いたほうがいいのか?」

「ううん、大丈夫。どのみちアンタに話せる事でもないしね。」

いや、余計に気になるんですが......

「にしても、こんなキレイなお店アンタが知ってるなんてねー」

「まさかとは思うけど、今日のこと誰かに話したりなんて」

「してます......」

「誰?」

「伊織だけど」

「なんであいつなんかに。いや、確かにこういうお店も知ってそうだけど、よりによって波島伊織なんてロクなことないわよ」

「仕方ないだろ、俺の周りでデ、デートに使えそうな店知ってるのなんて加藤か、伊織くらいだろ。流石に加藤に英梨々と行く店についてはな」

「確かにそうね...」

「でも、なんだかんだ美味いだろ!」

「ま、まあね」

「だろ、英梨々が気に入ると思ったんだよ」

「まさか、波島伊織と二人で......」

「そうだけど......あっいやそういうことじゃないんだからね!」



まあ、その後はアキバを二人でブラブラして、家のに帰ってからは戦利品を見せ合って、それはなんだか一番楽しかったあの頃のようで......

でも、今日はこのままで終わらせる訳にはいかない。

それはお互い理解していて、だからその時が来るのを伸ばしたくて、結局遅くなってしまった。


「もう、帰るね」

「送るよ、話さなきゃいけないこともある」

「答え出してくれるんだ」

「俺だって、いつも逃げる訳にはいけないからな」

なんて言ってるけど、これは自分に言い聞かせてるだけで、ホントは今も悩んでる。これでいいのかって


「「っ」」

「倫也が先に言っていいよ。」

きっと英梨々は、チキンな俺を気づかってくれた。自分も言いたいことはあるはずなのに、俺が曲がってしまわないように、本音で話せるように。

だから、俺は今日はいつものように、優柔不断主人公みたいにはなってはいけない。勇気を持って、カッコいい主人公にならないと......


「あのさ、英梨々。これから言うことは、嘘とか建前とかない、本心だから。だから、聞いてくれ」

「うん」

「今日二人で遊んで、気づいたんだ、俺はやっぱり英梨々が好きだ。大切なんだ。

だから、傷ついて欲しくない。」

「ずっと傍にいて欲しくて、守りたくて、抱きしめたくて、それが、幼なじみの安芸倫也の本音です。気持ち悪いかもしれないけど。」

「でもさ、オタクの俺は澤村・スペンサー・英梨々も好きだけど、柏木エリも大好きなんだよ、どうしようもなく大好きなんだ」

「だから、このまま柏木エリの絵が見れなくなるなんてさ、また一緒に作品を作ることが出来ないなんて耐えられない。」

「それに、絵が描けなくて悩んでる英梨々に、俺は何もしてあげられない。俺には描かせることが出来ない。」

「ゴメンな英梨々。俺は一緒居られないんだ、自分のためにそして何より英梨々の為に。」

「頼りになる男じゃなくてゴメンな」


「これで、覚悟が決まった。ありがとう倫也。」

「私は自分のために、そして倫也のためにまた絵を描くから、だから今度こそ応援してよね!」



次がラストです。

なかなか更新できなくて申し訳ないです。


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