第二話 デレって難しい



「もしもし、安芸です。澤村さんのお宅でしょうか?」

「ほらっ、やっぱりトモくんだったじゃない!」

「えっと、色々知ってる感じですか?」

「英梨々がチョコ持って行くって言ってたけど、持って行く相手なんてトモくんしか居ないし」

と興奮気味に話す。いや、おばさん何か勘違いしてるな

「お父さーん、やっぱりトモくんだったわよ

「やっと、英梨々に手を出してくれたか!良かった良かった」

「いや、よくないから、勘違いだからね!」

とまあ、ホントにわかってくれたかはわからないけど、一応説明を済まし電話を終えた。

明日家おいでなんて言われたけど、なんでなんだ

いや、もう眠いなんとかなるだろ。

もう眠気で何も考えられなくなった俺は眠りについた。



目を開けると、いつも見る天井ではなかった、まどろみの中で頭をフル回転させ考える。そうか、昨日倫也の家に来てキスをしてなんだかんだしてるうちに寝ちゃったのか。

思い出すと体が熱くなる。ふと下を見ると倫也が寝ている。寝顔なんて見るの何年ぶりだろう。恵とか霞ヶ丘詩羽は泊まりに来てたみたいだけど私は来てなかったしなぁ

そんなことを考えていた。

今寝てるし、キスしちゃってもバレないかなぁ、そんな考えが浮かんだ私は少しずつ顔を近づけていく。

その気配を感じたのか、倫也は目を覚ました。

「えっと、おはよう」

「んっ、おはよう」

「なんか変な感じだね」

「そうだな」

そう言うと倫也は立ち上がる

「昨日はありがとうね」

「えっ何が」

倫也は何か勘違いしたのか声をうわづらせる。

「何勘違いしてるのよ、昨日ベッドまで運んでくれて家に電話までしてくれたんでしょ」

「まぁうん」

「とりあえず、女の子の準備っていうの?してこいよ」

「母さんのがあるからさ、歯ブラシは予備のやつ使っていいから」

「うん、そうしてくる。」



洗面所で鏡を見ると酷い顔だった。

頬が緩み切っていて、幸せそうで、とても人に見せられるような表情じゃない。

その恥ずかしさを誤魔化すようにいつもより強めに顔を洗った。



自分の荷物を持ってリビングのほうに行くと、倫也が少し遅めの朝ごはんを作っていた。

「もうすぐ出来るからちょっと待ってて」

「うん」

倫也の作った朝食は上手く出来ているかはわからないけれど、美味しかった。

こんな時作れるように練習しなきゃなぁ


「俺も英梨々の家に行くからさ」

「えっ、なんで!?」

「久しぶりに話がしたいーとか言ってたぞ」

嫌な予感しかしない、絶対何か勘違いをしてる。それを考えると面倒だなぁって思ったけど、この勘違いを生かせば倫也から答えを聞けるかもしれない。

恋のためならちょっとくらいズルくても仕方ないんじゃないかなぁ



準備を終えおーい行くぞと言うと英梨々はバタバタと来た。

英梨々が玄関まで来たことを確認して出ようとすると

「ねえ、忘れ物っ」

振り返ると頰に柔らかな、それでいてしっとりとした感触。

「こういうの、新婚さんみたいじゃない?」

付き合ってもない男に、なんて一言文句言ってやろうと思ったけど屈託の無い笑顔でこんなこと言われて文句言えるわけないだろーーー

昨日から英梨々がデレデレ過ぎて怖い、なんて思いながら澤村邸に歩いた。











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