2018/11/25 18:28
我が家にはこたつがある。
こたつと言っても二人暮らしのなのでそんなに大きなものではない。
しかし、こたつはこたつ。暖かいものは暖かいのだ。
「ただいまー……」
かすれ気味の声で凛空が帰宅を伝える。
がちゃん、と玄関のドアが閉まる音と同時に凛空は、ばたばた、と廊下を走り抜けてきた。
凛空は鞄をソファに投げ捨てると、そのままの勢いでこたつに滑り込んだ。
「はぁぁぁ……極楽……」
「おかえり、鍵は閉めた?」
そう言うと、凛空は悲しそうな犬みたいな表情を浮かべてこちらを見上げてきた。
「行かなきゃダメ?」
「ダメです」
世は非情なり。鍵は最後に入った人が閉めるのです。
凛空は諦めてこたつから出ると、足早に玄関へ向かって鍵を閉めるとすぐに戻ってきた。
凛空がこたつを出てから戻ってくるまで約五秒。速い。
「閉めてきた……」
「うん、えらいえらい」
すると凛空はもといたこたつの位置に戻らずに、私の後ろに回り込んでくる。
「どうかした?」
「いや……」
ふわりと冷たい体が私を包み込む。
私の肩に顎を乗せてあすなろ抱きのようになる。
「どうしたの?」
「好きだよ」
いきなりそういうのはやめてほしい。心臓に悪いし、なにより恥ずかしい。
いっそう強く抱き締められて、私の体はだんだん熱を帯びていく。
時々、凛空は甘えてくることがある。
普段はこういうのを嫌がっているのに。まるで猫みたいだ。
「
「誰のせいだと思ってるのよ」
「俺、かな」
この確信犯め。
私は恥ずかしくて、でもずっとこうしていたい自分もいて、もうどうにかなりそうだった。
けれど凛空は離してくれる気配はない。
「ねえ、ご飯食べよ?」
「……梨苑が食べたい」
それは流石にダメだと思います。
私だってまだお風呂に入ってないし、それにそれに……。
って何をバカ正直に考えてるんだ私はっ。
「あなたまだ制服でしょ、着替えてきて?」
「制服でするのもいいと思わない?」
想像して、自爆した。
羞恥心のメーターが振り切れて、オーバーヒートを起こす。
凛空が耳元で笑った気がした。
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