2018/08/02 9:28

「おきて、りく。朝だよ」


 小さく唸り声を上げて、寝がえりをうつ凛空。

 少し長い前髪が横に流れて、まだ少し幼さを残す顔が露わになっている。

 思わず頭を撫でると、凛空はまた唸り声をあげて頭を振った。


「やめろ……子供じゃねえんだから……」


 凛空はゆっくりと体を起こして、まだ眠そうな目でこちらを見てきた。

 何かもの言いたげな目をしているが、残念ながら私には何が言いたいのかさっぱりわからない。


「だってもう九時半だよ? そろそろ起きないとまずいでしょ?」

「そうだけどさ……起こし方ってものがあるじゃない」


 ……撫でられるのがそんなに嫌だったのだろうか? 


「撫でるの、ダメ?」

「うん」


 いや、凛空が嫌がるはずがない。むしろ喜んで受け入れるはずだ。

 いつもは気持ちよさそうに目を細めて、まるで犬のように撫でられてくれる。

 しかし今日は打って変わって、それが嫌だと言う。


「なんで?」

「知らない」


 そう言うと、凛空は黙って布団から出て立ち上がって、無造作に私の髪の毛を掻きまわした。

 そして何も言わずに、欠伸を噛み殺しながらリビングへと逃げていった。


「……もう、なんなのよっ」


 一人、寝室に取り残されてしまった。

 凛空の枕に拳を振り下ろして八つ当たりしてみる。

 ぼふっ、といい音がして枕が潰れた。


「凛空のばか」


 潰れた枕に倒れこみ、顔を枕にうずめる。

 私の大好きな匂いに包まれて、私は少し頬を膨らました。


 凛空のくせに、私を照れさせるなんて、生意気。

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