Melty Days

赤崎シアン

2020/03/18 9:12

 白い、ただ白い部屋の中に、私の嗚咽が小さく響く。

 綺麗に敷かれた白いシーツと掛け布団の間には私のよく知る身体があった。

 それもまた白く、冷たく、そして静かだった。


「どう、してよ……っ……」


 いくら泣いても、いくら強く握っても、答えてはくれない。

 涙が落ちる度に心が少しずつ溶けて、流れ出ていくような気がした。慌てて袖口で拭っても溢れる涙は止まらない。


「ねえっ……ねえってばぁ……」


 私の声は部屋に吸い込まれて、誰にも届かない。

 ずっと胸が締め付けられるように痛くて、他に何も考えられないほどに君のことを考えている。

 なのに、どうして君は私のことを見てくれないのだろうか。どうして返事をしてくれないのだろうか。どうして笑ってくれないのだろうか……。


「いかないでよ……」


 約束したのに。

 どこにもいかないって言ったのに。

 一人にしないって言ったのに。

 幸せにするって言ったのに。


 ……君は行ってしまった。

 嘘だと言って欲しい。でもきっと本当のことなんだろう。


「りくってば……おきてよ……ねえ……」


 孤独だった私のことを救ってくれた君はもう居ない。

 またひとりぼっちに逆戻りだ。


 これから私はどうやって生きていけばいいのだろう。

 君を失ったこの世界で生きていけるだろうか。

 君が来ないあの家に帰れるのだろうか。

 君に会えない毎日に意味なんてあるのだろうか。




 この日、私の世界は君を失った。


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