第17話リザレクション・ウェザー①


「...だから、この時にこうっ!」


小宮(兄)が剛の顔写真が貼られたお面を被って変なポーズを決めている。


正直意味がわからないし何が会議なのかはまず会議ではないしそれにここは電脳空間である。


しかし小宮の話を聞いていると行き当たりばったりではなく、しっかりと決まっているものがあったり有力な情報があったりした。


「まず、高橋が飛ばした灰のお陰でいくつかのあいつの弱点...クセが見つかった」


そこからは長い間剛の動きのクセの話になった。



まず攻撃の時のクセだが...目と腕だ当たり前だがな、しかしその中でも目の動きがすごい。


例えば、左腕の大振りのサインは拳の握り直しだ、その後肩まで腕を引いて、そこで一回フェイントがきて、その後に一発デッカいのが飛んでくる。

その後に右足を半分ぐらい前に出すからそこがスキになる。


相手が弱いと確信するサインは...


回避するときは...


疲れを隠してる時は...


そんな説明が何分も続いた。




何事もなく次の日になる。



昨日通り適当に学校に来て真面目に作戦を練る事になると誰もが思った。


しかし...







今日も、教室に剛がやってきたのである。


何故かものすごいイライラしているようだ...


「私〜たちは〜お金〜持って〜ませんよ〜」


そんな堂理の言葉に何故か苦虫を噛み潰したような表情をしながら学生証をこちらに向けてくる。


「勝負だ...全員学生証を出せ」


まるで親の仇を見るような目でこちらを睨みながらドスを効かせた声で言ってくる。


それと同時に...


ガラガラ...


「おーい、遊びに来た...ぇ?」


「は?」


「なっ!?」


三浦先輩と岸村先輩と清島先輩の3人がこの教室に入ってくるが入った瞬間にそんな声を聞いたせいでつい脊髄反射的に学生証を取り出してしまう。


そのせいでその3人の先輩も巻き込まれたのだ。


そしてそのまま勝負が始まる。



やはり無機質な音声が鳴り、電脳空間が形成される。


ステージはこの前と同じ地下鉄のホームで、特に何も変わっていない。


先輩たちがいる事と、この試合が公開である事である。


公開試合というのはその名の通り学生証からスマホなどで簡単に見ることができる試合のことである。


と、いうことは僕らDクラスの人をコケにしようとする魂胆であろう。



すると、地下鉄の電子掲示板に合計戦闘力の表示が行われる。


これは公開試合特有のもので、どちらが強いのかなどを見ることができるのだが...


現在の表示がこれだ


Aチーム

【Dクラス1P×18】


計18P




Bチーム

【Cクラス5P(上位+10)】


計15P



Aチームの優勢です




「あぁ、正直言って皮肉としか思えない表示だな...」


そんなことを佐々木が俯きながら呟く。


それに鈴木も賛同し、他のみんなもほとんど同じ意見だった。



やはりこの前と同じようにホームの端っこに僕らは転送される。


ガチャ...


佐々木がB.B弾を込める音が聞こえる。


「あの時は全く効かなかったからな...俺はサポートに回るようにするよ」


「わ、私は...どうしようかな?ねぇ、お兄ちゃん」


そんなことを全員で話し始めた時...



ドカァァァン!!!



「「「「っ!?」」」」



聞きなれないほどの轟音が耳に飛び込んでくる。


「鈴木!高橋!索敵だ!!」


和笑の大声でハッとなった2人が索敵を開始する。


「と、取り敢えず私と多々間川さんと一緒に突っ込むから、佐々木くんと栗原くんはサポートお願い」


そんな鼓矢さんのお願いに僕と佐々木は軽く頷いて、僕は周り全員に回復を掛け、未だまだ見えない剛に対しての毒の準備をする。



だが...



ゴウッ!!



「グギァッ!!」


橋本の頭が吹っ飛んだのだ。



「「「「な、なにッ〜!!!」」」」


ドゴォォォッ!!


橋本の頭をぶち抜いたなにかが後ろの壁に当たって音を立てる。


「【自虐願望デッド・ブースト】!!50倍だ!」


日比谷は目を瞑って何かが飛んできた方向に意識を向ける。



痛覚が大きくなるってことは、たった少しの衝撃でもそれを強く感じられるということ...


つまり、風の動きでどこになにがあるのかが手に取るようにわかる!!


今オレたちがいるところの少し前に柱が二本両端にある...その奥、


ピクッ、


日比谷の肩が揺れ、叫ぶ。


「瓦礫だ!!」


「柱をぶっ壊した時に出た瓦礫を思いっきり投げてこっちに攻撃してきているッ!もう一発くるぞォォ!!」


ゴウッ!!


両手の手のひらに乗るか乗らないかぐらいの瓦礫がこっちに向かって飛んでくる。


その飛んできている方向は日比谷の方だ、


大声を出しすぎたのか、索敵要員をなるべく早く潰しておきたいのか分からないが取り敢えず飛んできている。



「グッ!!」


日比谷は目を瞑ったまま頭を横に動かす。


しかし、場所が手に取るように分かるとは言え完全に避けるのには無理がある。


痛覚を50倍にしたまま頰にほんの一筋の傷を負ってしまう。


「うぐぅぅぅッ!!!」


日比谷の頬は引きつり、物凄い顔になる。


が、そんな日比谷に神は味方しなかった。


ガガンッ!!



偶然か故意か、どちらかは分からないが飛んできた瓦礫が壁に二回跳ね返って日比谷に向かい始めたのだ!!



「危ないッ!!」


佐々木がエア・ガンを日比谷に向けて撃ち、パイプに通す。


そのパイプは流れる様な弧を描きながら瓦礫の丁度ヒビの入った所へと向かう。


バリッ!!


瓦礫が大体5個ほどの細かな瓦礫に分かれるが、そのうちの一個が日比谷の首に刺さる。


「か、かひゅ...」


変な空気が抜けるような声を出しながらそのまま前に倒れてしまう。


「わ、私と多々間川さんで特攻してくるから!!」


そう言いながら鼓矢さんが突っ込み、その後に多々間川さんが突っ込んで行った。



「あっ、そうだ清島先輩、お願いがあるのですが能力のチャージってもう出来てます?」







「ちっ、自爆女か」


何人かやったと思ったがこいつはやれてなかったか...


だが自爆される前に接近して殺せばいい話だ!!



そんなことを思いながら、体全体の強化比率を腕に集中させ始める。


「このぐらいまで強化すればあんな貧弱な女1人余裕で殺せるっ!!」


そして、自爆女をぶん殴る為に一歩踏み出した瞬間に...奴は地下鉄が通る線路の上、ホームの外に飛び降りたのだ。


しかもその瞬間、一瞬で異変に気付いた。


奴の体が浮いている事と、自分の体が引っ張られている事だ。


「なっ、ぐっ!」


今は能力の強化を腕に回しており、今の脚力はほぼ生身と言っても過言ではない。


しかも腕の強化に回しすぎたせいで今から脚力を強化しようとしてもそこまで強化はされない。


ゆうて1.5倍ぐらいだ。


「ググググッ...」


あまり強化されていない足ではそこまで踏ん張ることが出来ないし、今立っている床も溝がほとんどない綺麗な床である。


勿論この状態で強化比率の大きさを腕から脚に変え、耐えられるようになってくる。


しかし、ここで...


グサッ!


「いっ!」


「ううっ...痛いッ!」


背中になにが太い針のようなものが刺さる感触がした。


それと同時に女の悲鳴が聞こえた。




この時、鼓矢は多々間川と話していた作戦を思い出していた。




「いい?まず私がフルパワーの自爆で剛を引き寄せる、その時に多分攻撃用の強化よりも私の吸引に耐える為に足を強化すると思うの」


「うん」


「その時に、背中からこの...何だっけ?これ、アイアンサイトじゃなくて...」


「メリケンサックだよ、鼓矢ちゃん」


「そうそれ!ちょっと痛いかもだけどこれで殴って!」


そんな作戦だ、いくつかこの作戦には欠点があった。



まず一つは多々間川が吸い込まれてしまう事、


二つ目は剛が防御に転じず、そのまま突っ込んで殴られていたら終わりだという事、



しかし、剛は防御に転じ、多々間川は吸い込まれなかった。



が、


「クソッタレが!!」


左腕を強化して思いっきり薙ぎ払うように腕を動かし、多々間川を反対側の線路のところまで吹っ飛ばす。


しかし、多々間川の能力は一番多々間川自身が知っており、奴の能力の厄介さも剛は知っていた。


「なっ!しまった!!奴を殴ってしまった!!」


しかしこの瞬間に能力を発動させる多々間川ではない。


今発動させると防御される可能性の方が高いからだ。


だからこれから隙を作る。


「鼓矢ちゃん!!お願い!!」


鼓矢が爆発体制に入り、吸引力が著しく下がる。


「おっ?」


いきなり吸引がなくなったことによりバランスを崩す剛、そして、



「はぁぁぁぁ!!!【屑の仕返しダスト・ダンス】っ!!攻撃を返せぇぇ!!」


剛の背中に拳が現れ思いっきり、これから爆発する鼓矢に向かって押し込むように



「グッ!!なにぃぃぃ!!!」


能力を発動させた!!



ドカァァァーーンッ!!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る