第13話黄色い線の内側まで下がってお待ち下さい①
「「ん?」」
堂理さんと2人で蹴っ飛ばした扉だったが、どうやら少し前に人がいたらしく、その人を踏みつけてしまったのだ。
しかし、僕と堂理さんは急いでおりそんな事には気付かずに《なんか踏んだ時の感触が柔らかい》ぐらいしか違和感を感じておらず、そのまま教室へ向かったのだった。
「いってぇ...クソッタレが」
急いで廊下を走り、教室のドアを開けるとほぼ全員が揃っていたが、男子は机に座りゲーム機を持ち込んでゲームをしている。
女子の方は、なにやらネットの占いの結果で盛り上がっているらしい。
「あっ、堂理ちゃんに栗原君、遅かったね〜」
そう鼓矢さんが話しかけ来たので、
「Sランクの人に会ったんだけど」
そう言うとすこし鼓矢さんは驚く。
その言葉に続いて
そのあといきなり時間が進んだみたいになって遅れた...のかな?
と、言うと大方の予想を日比谷がする。
「あぁ、それならSランクに時間を操作できるやつがいたはずだから多分そいつかな?」
そんな何気ない会話をするのだが、つい先程授業開始のチャイムが鳴ったのに授業をしている気配がないのに気になり横でゲームをしている鈴木に声をかけようとすると、佐々木が口を開く。
「あの先生、どうやらヤのつく人達に金借りていたらしく、その借金を延滞したせいで臓器を大体全部取っ払われて死んだらしいぜ〜まぁ...噂だがな」
佐々木が予想外にハキハキ喋るので少し驚いたがすぐに暇になり何をしようか考えた結果皆にパシリについて聞いてみることにした。
「んあ?パシリ?されてねぇよ」
佐々木はこう答え、
鈴木は
「良くされてるよ〜」
と、気楽に答える。
そして、分かったことは男子は佐々木を除いてほぼ全員がパシられており、
女子の方はパシリは特に無いものの、良く悪い噂を流されたり、偶然会った時に水を掛けられたりなどと酷い有様だった。
そんな悲惨なDクラスの状況を目の当たりにし、頭を抑え唸っていると、
いきなり、パリーンッ!と、ガラスが割れる甲高い音が響く。
「「「「っ!?」」」」
Dクラスの人が全員警戒態勢に入り、さっきまでゲームをやっていた男子も、占いの話や愚痴の話で盛り上がっていた女子も一瞬で静かになり席を立ち上がる。
バキッ!!メキメキメキッ!!
木造の壁が力任せにへし折られる様なそんな音が響き、Dクラスの警戒度を上げて行く。
「身体強化系の能力者か?」
そう橋本が呟きながら左手から灰を出し、その灰を廊下に大量に投げると鈴木が頭を振って奥に奥に灰を飛ばす。
「何してんの?」
僕が素朴な疑問を橋本と鈴木に投げかける。
「いや、いまいち分かんないと思うけど、こう言う物質創造系の能力者って作った物の状態とかが分かるんだわ、それにこう言う粉系なら風で飛ばす事によって地形の把握も出来るって寸法だ」
まぁ、鈴木とか風を操る系の奴がいないと出来ないんだがな、と付け足す。
僕は、その地形把握がいつ終わるのかを待ちながら周りを警戒する。
するとどんどん橋本の顔が青くなって行く。
「不味いな...身体強化系の能力者だ、しかも相当強い...僕らからするだけど」
そう呟きながら橋本は廊下の奥の方をじっと見ていた。
「...そこまで分かるのか、スゲーなお前、目潰しだけじゃねーのな」
そう横で僕らの話を聞いていた桐条が感心した様に呟く。
「まぁ、最近思いついた奴だし、さっき言った通り鈴木に頼まないとそう遠くまで飛ばないし、自然の風があるとほぼ意味がなくなるがな」
そう残念そうに溜息をつきながら言う。
呟き終わると、真剣な顔に戻り現在の廊下の様子を僕らに伝え始める。
「さっき鳴ったメキメキッて音、あれは大体厚さ10cm以上ぐらいの木材を思いっきり折った時の音だ、そんなことが出来るのはCクラス辺りの人だ...」
そう、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ左手に物凄い力が入り、灰が大量に零れ落ちる。
「と、取り敢えずに、逃げましょうよ!」
そう小宮(妹)が叫んだと同時に、
今回の敵が現れた。
「あームカつく、ムカつくムカつくッ!!お前ら!!有り金全部この俺様に渡せ!渡さなければどうなるか分かってんなあ!?」
相手は何時ぞやの身体強化系の剛であった。
「「「.............」」」
僕の周りの人達はほぼ全員が固まって動けなくなり、数少ない動ける佐々木も相手を警戒しまくって敢えて動かないと言う選択をするほどだった。
この状況に腹を立てた剛が学生証を出してくる。
「おい、お前ら全員でかかって来いよ、俺が勝ったら全員に好きなだけ命令できる...謂わば奴隷って奴?でももしお前らが勝ったら俺をお前らの奴隷にしてくれても構わねぇ〜ぜ?」
あれは...完璧に調子に乗って居る目だ、それはDクラスの全員が一瞬で理解できることだった。
だが同時に、完璧に調子に乗っていたとしても倒せるか分からないほどの強い敵であると言うことも一瞬で理解できた。
なぜ、《身体強化》と言う単純な能力が強いのか、解説していこう。
まず、身体強化をする際に一点に集中して強化(主に五感など)した際、例えば視覚であるとすると動体視力、視野、視力が大幅に強化される。
それと同じ様に聴覚、嗅覚、痛覚、味覚、なども強化することが可能であり、シンプルでありながら多彩である、特徴的でこれしか出来ないと言う様なものと比べると万能な素晴らしい能力なのである。
それに、足の筋肉、腕の筋肉、皮膚の硬さをうまく強化する事で攻撃も防御も自由自在に操ることまできる。
この事は、中学校の授業で習うので正直今の世界では常識であり、誰でも知って居る事である。
そのため、この時逃げようとした小宮さん(妹)がいたのだが、
「おい、バレないとでも思ってんのか?」
視力を強化して見つけられ、
そう問いかけられビクッと体を震わせて教室内へ戻る。
教室の中では全員がいつもの机の上に学生証を置き、逃げられない戦闘へと準備を始める。
学生証の無言無操作チャットが始まる。
無言無操作チャットと言うのは脳内に埋め込まれたチップを応用した通話方法で念じるだけで登録した人と通話できると言う便利なものだ。
ちなみにもうクラス全員の登録は済ませてある。
桐条【さて...どうしようか】
鼓矢【どうしようかって言われても...取り敢えず栗原がバフをかけて、鈴木と高橋の目眩しからの私の特攻でいいんじゃない?】
小宮(妹)【も、もしダメだったなら?】
小宮(兄)【高橋の灰と桐条の炎を応用した粉塵爆発や清水さんの能力で相手の視界を真っ赤にして困惑して居るところを突く、まぁ、取り敢えずのアタッカーは佐々木と鼓矢さんと栗原かな?後良くて多々間川さんかな?】
栗原【とりあえず僕は最初っからリジェネを味方にかけて毒を相手にかければいいのね、了解】
堂理【私が〜、遅く〜して、おきまぁ〜す、よー、その、間に〜お願いね〜】
鼓矢【私は初っ端特攻かますけど...栗原?ヒール出来る?】
栗原【た、多分...あっ、でも___
ここで無言無操作チャットが強制終了する。
戦闘がもう開始するからだ、
「おい、作戦会議は終わったかぁ?それじゃあ始めるゼ?」
そう言い終わると、僕らDクラス一年生は全員電脳空間へ吹っ飛ばされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます