第11話ルミエーラさんは猪突猛進して荊に突っ込む
「...相変わらずありがとうね、それで...ランクは?ランクはどうだったの?」
今、目の前にいるのは僕...僕達の親代わりのルミエーラさんで、外見はものすごい美人。
髪の毛は金髪で腰まで下ろしており、肌は透き通るように白く、目は青色、性格は心優しくどんな人でも包み込んでくれるような海のような人である、そして尚且つ...胸がデカイ。
因みに今の状況はこの孤児院の最年長であるこの僕が学園から帰ってきたのでそのお迎えと感想を聞きに一対一で談話室に入っているというわけだ。
「はぁー、残念ながらDランク、能力は少しずつ傷を癒すことと少しずつ傷を付ける感じだってさ...」
ものすごく残念そうに話しをしたのだが、ルミエーラさんは目を輝かせ、テンションMAXで返事をした。
「ものすごいいい能力じゃないですか!!!だって傷を、人々を癒すことができるのですよ!?」
「うわっ!」
ルミエーラさんが身を乗り出してまぁまぁな大きさのテーブルを挟んで置かれたソファーに向かい合う形で座っていたのだが、その距離を一瞬で詰めてしまうほどの乗り出しっぷりだった。
「で、でも...本当に少しずつだけだけどね...」
「でもっ!!傷を癒せることはすごいことです!!あっ、そうだ、そう言えば今日川村三兄弟が鬼ごっこの途中で膝を擦りむいてしまったの、その傷を直してもらえないかしら?」
そう、思い出したように言い僕の左手を引っ張って保健室に連れて行く。
ガチャッ、
保健室に入ると、いつもルミエーラさんが座っている椅子に座らされる。
「ここで待ってて今、|蓮(れん)くんを連れてくるから」
「あっ、はい」
そのまま椅子に座っていると、廊下の方から足音が聞こえ始める。
ガチャッ、
扉が開く。
「あっ、栗原くんだ」
まるで同年代みたいに扱われているが5歳ぐらい違っている。
そう言われると、正直言って自分でもそう思っていることなのでもう否定はしないが、とても大きなため息を吐く。
「まぁ、取り敢えず傷口を見せてみ?直すから」
そう言われるとよく分かっていないようだったけど、
「...【|回復と毒(ライフ・デット)】」
緑色の光が蓮の膝に集まって徐々に傷口を塞いで行く。
「おー!すごーい!まほうみたーい!!」
「ふふふっ、高校生になったらみんな使えるようになるんだよ?」
「そうなのーー!?」
子供の無邪気な視線を一点に向けられ少し微笑む。
「まぁ、こんなものですよ、ルミエーラさん」
「すっっっっごーーーーい!!!!!」
正直、ルミエーラさんの方も無邪気でキラキラとした瞳でこちらを見ていた。
「本当に傷を治せるのね!!!凄いわ!そうだ、こんな能力が使えるようになるのなら私も能力開発受けようかしら...少し高いけど大丈夫よね!」
そうブツブツと独り言を言っていると、いきなりバッ!と玄関の方向を向き、まるで韋駄天のように外にお金を持って出て言った。
因みに、先ほどまでルミエーラさんがいたところには置手紙が置いてあり、
" 今から能力開発を受けてきます。きっと回復系の能力を手に入れられるから大丈夫よ! "
と書かれていた。
「はぁ〜流石...変わってない、猪突猛進さは半端ないなぁその中でもヤバい方だと思うけど」
そう言いながら同じ孤児院の仲間たちと一緒にものすごい勢いで立ち去ったルミエーラさんのことを考えながらぼーっと玄関を見ていた。
あの後なんだかんだ時間は過ぎて晩御飯が終わる。
「「「「「ごちそうさまでした!!!」」」」」
「はい、ご馳走さまでした」
今、晩御飯を食べ終わってご馳走様の挨拶を済ませる。
それと同時に時計を見ると、もう9時を回っているのに気づき周りの子供達に寝るように催促する。
「分かったね?ちゃんと寝なよ〜?」
「「「「「「はーーーーーい!!」」」」」」
全員が大声で返事をして歯を磨いて寝室に入って行く。
その様子をぼーっと見ていると玄関の方向からガチャッと言う音が聞こえた気がして後ろを振り返る。
するとそこには...
「はぁー、はぁー、しくじったわね...まさかここまで鈍っているとは...」
そう呟き、息を荒くして下を向き膝に手を添えている服がボロボロなルミエーラさんがいた。
「っ!?ルミエーラさん!大丈夫ですか?まさか変な能力者に...」
「ぁ...いや、こ、これは...そう!転んだのよ!転んだだけなのよ!!」
そんな言い訳を聞きルミエーラさんの体全体を見る。
...ところどころ素肌が見え、エロい雰囲気に___って違う違う、
「あら?まさか私の体を見て...ふふっ、まぁ一様聖職者みたいな感じだからダメなのだけど...」
そんな妖しげな笑みを浮かべルミエーラさんは体をくねらせる。
「違いますよ...いくら転んだとは言っても、そんな大量に全身を切ります?」
「...い、茨にそのまま突っ込んだのよ」
そう冷や汗を垂らしながらそっぽを向く。
「あー、はいはい、話したくないのなら仕方がないですね...取り敢えず治しますからこちらに来てください」
「はーい!」
そう元気よく言いながら僕の目の前に来る。
「...【
キュウィィ...
ルミエーラさんの身体全体が緑の光に包まれて徐々に回復して行く。
「ありがとうね...そろそろ寝たらどうかしら?まだ9時半ぐらいだけど今日はいろいろあって疲れたでしょう?」
その気遣いに甘え、僕は歯を磨き寝室へと入って行った。
「むっ...」
目がさめる。
まだ寝ていたいと言う気持ちを押さえつけ身体を起こす。
「うぅ...ふぁぁ〜」
毎朝恒例の伸びをしてベットから起き上がり、少しふらっとする体を支えながら軽いストレッチを始める。
「グググッ...っはぁ」
ストレッチを終え、ベットのすぐそばにかけられていた制服を着て孤児院のリビングに向かう。
ガチャッ、
「あっ、ルミエーラさん、今日は7:40分に出るよ」
そう言いながらルミエーラさんの方を見るとまるでリスのように頬を膨らませた顔で返事をする。
「...ふぉう、あふぇ?ならふぉうふひへふほ?」
「...食べてから喋ってください」
そう言うとルミエーラさんは頑張って咀嚼を始める。
ムシャ、
ムシャ、
ムシャ、
ゴックン!
「...7:40ならもうとっくに過ぎているよ」
「へ?」
そんな間抜けな声を出して時計を見ると驚く。
7:30分なのだ。
「ルミエーラさん?まだ10分もあるじゃないですか?」
「いや〜、だいたいあってるでしょ...まぁ、10分もあればこれぐらい食べれるでしょう」
そう言いながら台所に向かい、1つのパンを持って来る。
「ほれ」
「ポムッ!」
そのパンを僕の目の前に持って来るや否や僕の口に向かってホットドッグ?みたいなものを突っ込んだのだ。
「ルミエーラ...さん、一瞬息ができませんでしたよ...」
そう言いながらもペロリとパンをすべて食べ、学校へ走って向かう。
「それで入ってきますね」
「いってらっしゃーい!」
ガチャッ、
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