第10話まぁ、相手がそこまで攻撃して来なかったのが幸い



作戦開始と同時にゴミ箱の陰に隠れていた3人から堂理ちゃんだけが道路に出る。


「ふっふっ〜、私はここで〜すよ!」


マンホールに手をつけてそんな気の抜けた声が響き、


「お前...あのクソ男の仲間のアマかぁぁ!!!!死ねええ!!」


「【減速する物者タイム・スロー】!」


ギュゥゥゥゥ...2人が目に見えて遅くなる、と言うよりも止まる。


「今ですよ!先輩!」


その僕の掛け声と一緒に先輩と2人でゴミ箱の陰からでて今ものすごく遅くなっている2人の間にあるマンホールに手をつけて毒をマンホールに付与する。


パキッ、


「先輩!毒の付与完了しました!」


「了解!じゃあ...」


先輩はほぼ静止した状態の堂理ちゃんを担ぎ上げ、ダッシュで相手の後ろに回り込む。


「そ、それでここからどうするんですか?」


「待つ、と言うよりも帰っていいよ、これでもう奴は術中にはまっている...はず」


自信なさげに下を向き考えながら答える。


パキッ、


パリッ、


ピキッ、


マンホールにどんどん小さなヒビが入っていく音が聞こえる。


「...こんなもんかな?堂理!解除てくれ!」


「..........」


「あれ?」


2人で数秒考えて僕が答えを出す。


「そう言えばさっき解除するときは肩を数秒触っててっ言われてませんでした...?」


「............」


完璧に忘れていた顔だ。


パッ、


2人の速度がいきなり元に戻る。


相手から見るといきなり狙っていた敵が背後にテレポートして仲間が隣にいるみたいな状況である。


しかし、減速される直後前に進もうとしていたのでエアシュート(水道)入り口に足を落とす。


コトン、


「チッ、なんにかは知らないが...今の転移はどうやった?」


「ふん、教えると思うかい?」


この時、内心焦っていた。


もちろんその内容は明白、まだエアシュートへの入り口が壊れないからだ。


少し前に早いと勘違いしていた壊れる速度なのだが、壊す製品がどれだけ工程を積んで作られているかによって変わってくるのだ。


いくら少し前のであるからと言ってエアシュートへの入り口を頑丈に作らないはずがない。


数年前、エアシュートで人を運ぼうとした実験で骨折などの重傷を5人中2人がしたぐらいの危険なものなのだから。



ピキッ、


まだまだ音は響く、このままではこの音に相手が気づいてしまう。


「チッ、仕方ない、君の肩借りるよ!!!」


ドシンッ!!


そんな真剣な声が聞こえたと同時に両肩に衝撃が走る。


そのせいでバランスを崩す。


「ハァッ!」


先輩が僕の肩を踏み台にして2〜3mまで飛び上がる。


「くらえぇッ!!!」


飛び上がる時も大事に抱えていた冷蔵庫の中身を相手に見せつけるように開く。


ヒュンッヒュンッヒュンッ!!


そこから3つのメロンバーが高速回転射出される。


しかし、その三発のメロンバーは相手にかすりともせず、先輩はうまく着地できずに足首を痛める。


「何だ?本当にSMNの工作員か?にしては...」


何かを相手が呟くが声が小さすぎて聞こえない。


「おい、俺が狙ったのはお前じゃない...って言ったらビビるか?」


四つん這いになり、地面を見つめながら言う。


「俺が狙ったのはそのお前が立ってる地面だッ!!」


人差し指を相手に向け、高々と宣言する。


「なっ...確かにここはエアシュートの入り口ッ!?」


しかし...この程度で壊れるような出来にはなっていないはずだ、だが...


何かを警戒したのか真下を見る相手...


「だが、それは嘘だぜ!!」


思いっきり横にあった冷蔵庫をぶん投げる。


相手もまたすぐに何かを投げた事に気づき少し屈んでいる状態から立ち上がる...瞬間、相手が足を滑らせたのだ。


「なっ...」


そして、冷蔵庫は転んだ相手の腹に直撃をして、その衝撃で凍っていたエアシュートの入り口はぶっ壊れたのだった。


「ぐッ!!」






____なに?なぜあそこで相手が滑ったのかって?簡単な話だ、メロンバーの温度を馬鹿みたいに下げておいた。それを発射して周りを凍らせた、それだけだ



「それじゃあ、俺はここで別れるな」


「あ〜私も〜ここから左側です〜」


マンホールから少し歩いたところの分かれ道で先輩と堂理ちゃんと別れ、家に向かい歩き始める。


「はぁー、今日は長い1日だったなぁ...」


そう思い歩く。


家の近くの公園を過ぎ、



公園の隣にあるコンビニに寄ろうか迷い、お金が少ないことを思い出し諦め、


狭い路地裏を抜け、


大量に落書きがされたスーパーの荷物置き場の刺激臭に鼻を塞ぎ、


蔦が生え散らかっているまるで廃墟みたいな見た目の大きめな洋風建築の家があり、そこに入る。


そこの表札は、孤児院 カスミソウと書かれていた。


「「「お帰りなさい!栗原おに〜ちゃん!!」」」


「うん、ただいま」

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