示制甘-バナナはおやつに入りますか?-

「バナナはおやつに入りますか?」

 深夜に非通知でかかってきた電話。少女の声で投げかけられた問に、しかし私は答えられずにいた。

 バナナ、バナナはおやつなのだろうか。

 答えが見えず悶々とした私はとりあえず電話を切った。

 おかしな事を考えているうちに少し時間が経っていたことに気付き、私はとりあえず寝ることにした。


 それから毎日深夜の1時頃、非通知で電話がかかってきた。そして少女の声でこう尋ねるのだ。

「おやつはバナナに入りますか?」

 1週間問われ続けても、私はこのテンプレのような疑問に答えが出せなかった。

 小学校の頃の先生曰くバナナはおやつには入らない。しかし一方で入る派が根強いのも事実だと思う。ネットで調べてみても半々だ。

 いや、そもそもこの問に明確な答えを出してしまうことからして適切なのかどうか。

 私はこの思考の沼にハマってしまった。

 そもそもバナナがおやつにはいるかどうかを聞くのは、遠足におやつ代の制限があったからだ。バナナがデザートに分類されるか、おやつに分類されるかはおやつ代の計算に大きく響くのだ。しかし正直な所、私の小学校時代の遠足ではお弁当を食べたすぐ後におやつを食べていた。おやつもデザートも全く変わらなかったと言えば変わらなかったのだ。

 となればバナナがおやつに入るかどうかをハッキリさせる必要も無いような気はするのだが。それでも私はこのおかしな疑問を抱え続けずにはいられなかった。

 また今日も考えてしまう。

 1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月が過ぎても。

 仕事中、食事中、入浴中、時と場合お構い無しに。

 あなたはどちらだと思いますか?

 バナナはおやつですか?それとも...

 今日も電話はかかってくる。

「バナナはおやつに入りますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る