第2話 アドバイスと増田くん
毎日のように妖精は現れた。主に、私が一人で部屋にいる時に。人前で出てきたら独り言を云っている人になるので、そこは助かる。
妖精は、私に色々なアドバイスをくれた。
一分でいいので、毎日部屋を片づけるといいと云われた。今まで私の部屋には床に物が散らばっていたけれど、徐々に綺麗になっていった。一分だとついでみたいなものなので続けられた。
他人には、こまめにお礼をするといいと云われた。相手の負担にならないような小さいお菓子も喜ばれると。暫くすると、同僚からお土産を貰う事が増えた。嬉しい。
お菓子一つで、ストレスが一つ減る気がする。
次はちょっと高レベルになった。花を育てる。花屋なんて、行った事がない。
いつだったか友達が、何でもない日に切り花を持っていた。
誰かに花をあげるの? と聞いたら「ううん、部屋に飾るの」と云っていた。
その子はメイクもファッションもいつもバッチリの子だった。外見だけじゃなく、部屋の中までバッチリなんだろうなぁと、感心した。
花屋に行って、鉢植えを買ってきた。毎日水をあげて、太陽を気にする事が日常に加わった。
妖精が、花の周りを飛んで嬉しそうにしていた。花を飾って、良かった。
〇
以前から交流のあった増田くんから連絡が来た。いわゆるデートに誘われた。
デート終盤、増田くんに告白された。
どうしていきなり? 思わず聞いてしまった。
「この間、皆で集まった時になんか……気遣いが出来ていて、いいなって思った」
自分で聞いておいて、私は赤面してしまった。真正面から云われると、こんなに照れるものなのか。気遣い、それが女子力ってやつなのか。
増田くんは公務員で私より二つ年下で、黒縁眼鏡が似合うオサレ男子だ。こんなイケている男子から告白されるなんて。
増田くんはお洒落なお店へ連れて行ってくれる。外見だけじゃなく、中身もオサレなんだな。
増田くんは心の広い男の子だから、あんまり気張らないで少し頼る位の気持ちで接してもいいと妖精は云った。
「でも、自分を綺麗にする為の努力は惜しまないでね」妖精は、恋のアドバイスまでくれる。
妖精が現れてから、色々な事が少しずつ、変化している。私の生活習慣から、このままいくと人生まで。
〇
妖精に会う前は、会社から帰宅するとすぐにごはんを食べたり座ってばかりいた。今は毎日適度に運動したりストレッチを欠かさない。そのお陰か、精神的にも落ち着いてきた。
増田くんは一人暮らしをしているので、時々増田くんの家に行ってごはんを作ってみる。妖精のアドバイスのお陰で、手軽に中々の料理が作れるようになっていた。
増田くんは私の作ったごはん(レシピは妖精だけれど)を美味しいと云って笑顔で食べてくれるし、私の話をよく聞いてくれる。
こんなに良い恋人がいて仕事は順調、最近はストレスもない。時々は、掃除や花の手入れをサボろうという気持ちになってきた。ある程度、体や精神の健康は作られてきたんだから、ここで少し位サボっても変わらないでしょう。
新しい情報を仕入れるのも面倒なので、ファッションもとりあえず流行のものを着ていた。
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