第18話硝子細工の羽根
飛びたいのに、飛べない。飛びたいのに、飛んではいけない。
こんなに悲しく、空しく、やるせないことがあるだろうか。
もし私の背中に翼が生えているとすれば、それはきっと硝子で出来たものだ。羽根をむしり取られた籠の中の鳥のほうが、まだましだと思ってしまう。完全な絶望を与えてくれたほうが、まだ救われるというのに。
あなたは私の事を、籠で覆ったりはしていない。見える鉄の柵で出来た籠に、閉じ込めたりはしていない。あなたがしたことはただ一つ。私の首に輪を嵌めただけ。
「そばにいて」その言葉が、私の首を絞め付ける。緩やかな痛み。けれどもじわじわと忍び寄るような苦しさがあって、思うように息が出来ない。
わかっている。どんなものにも、私は閉じ込められてはいない。でも、見えない縄に繋がれている。振りほどいて飛んでしまうことは簡単だ。だが飛んでしまえば最後、私の羽根が壊れてしまう。笑ってしまうほど儚く、脆い羽根だ。
だって飛んでしまうと、あなたが耐えられなくなってしまうだろうから。私も、耐えられないから。
だから私は飛ばない。繋がれたままでいる。私も言う。「そばにいて」と。その言葉で、あなたの首を絞める。
羽根を硝子にしたのは、あなただったか。それとも私だったか。もうわからない。
硝子細工で出来たこの羽根。いっそ誰か粉々に打ち砕いてくれればそれで全てすむのに。
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