第10話闇に呑まれる

この星を明るく照らす存在が、西の山の尾根へと沈んでいく。完全に沈み隠れるその瞬間まで、それは明るさを伴ったままだった。

 鳥が巣に帰ろうと、広い空を背に羽ばたいている姿を、目で追う。

そんなことをしてる間にも、空の持っていた赤色はどんどん薄くなっていく。

 空の色が完全な闇に塗り替えられるまで、そう長くはない。

闇の帳が落ちるのは、毎日の事。当たり前の事。ずっと変わらずに繰り返されてきたこと。

 しかし。

なぜだろう、いつもそのことに不安や恐怖を覚えてしまう。

空も周囲も闇に包まれていく様を眺めていると、ふつふつと孤独感が襲ってくる。

 この世に自分は一人きりなのではないか。

もう他の生命は、自分以外に存在しないのではないか。

この町は、世界は、実はもう滅んでいるのではないか……。

 そんなこと有り得ないときちんと理解しているのに、それでもつい考えずにはいられない。突拍子もない考えと、ひたひたと纏わりつくような孤独感を振り払うため、

頭を振り、そして空を見上げる。

 この時間の空の色は、宇宙と同じ色をしている。

なぜだか急に、そんな思いが頭を掠めた。

孤独や恐怖を味わうのは、そのせいなのだろうか。

 笑ってしまうほど果てしなく広がる宇宙。その中にぽつりと浮かぶこの星。

私はそんな地球の寂しさを、意図せずとも感じとっているというのだろうか。

この星に生を受け、日々を生きているのなら、それも仕方の無いことなのだろうか……。

 人知れず、たった一人そんなことを考えている私をおいて、世界は闇を纏いはじめていた。

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