第9話明ける世界

 ふいな意識の覚醒が、私のもとに訪れた。

枕元に置いてある時計を見ると、起床予定の時間はまだずっと先だった。

 一つ息を吐いて、再び夢の世界に旅立とうと目をつむる。だが、一向に眠気はやってこない。それどころか、ぼんやりとした頭の中が、段々と覚めていく。

 何度か寝返りを打った後、頭だけ窓のほうへ向けた。閉め切られていないカーテンの隙間から、青白い光が漏れているのが目に入った。

こちらに来なさい。そう言われているような気がした。


誘われるがままに寝具から抜け出し、カーテンを捲り、外を覗いてみると。

 空が、瑠璃と群青のグラデーションで描かれていた。まるで夜の色の上に重ね塗りをしたかのようだ。街も、空と同じ色で塗られている。一色に色づけられた、青の世界。そんな空間が、窓の向こうにどこまでも広がっていた。

 私は、こんな世界があったという事実にただただ驚き、そしてその光景に目を奪われた。 どれくらい、その世界を窓の内側から見入っていただろうか。

 世界の青が、徐々に薄いものへと変わってゆく。同時に、靄がかかった街の輪郭が、くっきりしたものに変わっていく。街を染めていた青色が、ゆっくりと消え始める。

 私のいるこの世界は毎日、このような移り変わりが行われてきたのか。私が産まれてくるずっと昔から、繰り返されてきたのか。

 街があくびをして、のびをして、上半身を起こす。

 世界が目を覚ましていく様を、私は窓の内から、じっと眺めていた。

 東の空のずっと下の方から、とても明るく眩しい存在が、少しだけ顔を覗かせていた。

今日が、始まる。

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