第4話早朝の贈り物
まるで全てが凍り付いたような世界。
日の出前の街は、世界中が寝静まっているのかもしれないと錯覚させられるような、そんな静けさを持っていた。
街はまだ夢の中にいる。眠らずに起きているのは、道の端に立つ街灯のみ。
吐き出した息は白く色づき、すぐに宙へと溶けて消える。
分厚い灰色の雲に覆われた空を見上げながら、無音の世界を歩く。
刺すような寒さとあまりの静けさは、体の震えを止まらなくさせる。
冬用の重いコートを引きずって、足を一歩、また一歩と踏み出す。
その時。灰色の空の隙間から、白い小さなものが落ちてくるのが見えた。
ふわりふわりと、風に揺られながら、頼りなさげに地上へと向かってくる。
ゆっくりと手を伸ばす。真っ白なそれは、手の平へと舞い降りた。
けれど途端に、すっと手袋に吸い込まれ消えた。もう跡形も無い。
こんにちはと言いかけた口は閉じられた。小さく、さようならと紡がれる。
ずっと手袋を見つめていた。
雪が降り始めていた。
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