第3話世を辞める時

 その現象は、一体何なんだろうか。

 例えるなら、一本の蝋燭に灯った火。

それが消えるその瞬間、否が応でもこの世界との繋がりの全てを絶たれる。

豊かな色彩に溢れた、かつて私がいた世界には、二度と戻れない。

何を言おうが、この声は届かない。何かをしても、もう残らない。

 私の姿は、消えた。何もかもを、無くして失う。

そして、在りし日に、この色で溢れた世界に私がいた、その事実も。

やがて残らずに、かき消えていくのだろう。

 暗い石に彫られた私の名前が、風雨にさらされ、徐々に見えなくなっていくように。

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