第2話 #アテナ

バーの一件から警察は奈々を完全にマークするようになり、追われる身となった。

今回は不思議と、自分がHEROになったという記憶がある。

自分がHEROであったという事実、オオカミに豹変したとはいえ、人を殺めてしまったという事実、そして、タカにその現場を目撃されてしまった現実。

奈々は完全に精神が不安定になりながら、逃げ回っていた。



奈々は公園にいた。公園にはヒーローごっこをして遊ぶ子どもたち。奈々は自分の今の状態と照らし合わせる。

どうしてこんな不思議な力を得たのか、検討もつかない。

『この力のせいで、自分の人生はめちゃくちゃになってしまった・・・。こんな力になんか目覚めなければよかったのに』

自分を責め、自ら身体を傷つけ、自暴自棄になっていく。



そんなある日、タカから着信がきた。

奈々が逃亡してからタカは、ずっと探していたそうだ。

奈々の隠れ家に来たタカの姿を見た瞬間、奈々の涙腺は一気にゆるみ、緊張の糸がほどけた。

奈々はタカに、ナオキが死んだ日からの一部始終の出来事をはなした。

タカは動揺を隠せない様子だったが、

「君はそのままでいいんだ、僕は君の味方だから。」

と奈々を励まし、慰めた。


『私はこのままでいいんだ。悪いのは私じゃない。ナオキの浮気現場に遭遇してしまったとき、ナオキに近寄ってきたあの女が全て悪いんだわ。

そう、だから悪者は全部私が殺してやるの。』


何かに吹っ切れた様子の奈々は、変身後の自らの姿をアテナと名付け、オオカミ退治を続けた。アテナとは、ギリシャ神話に登場する戦闘の知識や戦いなどをつかさどる女神の名が由来だ。

アテナは時には白昼堂々オオカミ退治をするなど、その行動は徐々にエスカレートしていった。

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