第1話 パンケーキとアイスクリーム

 待ち合わせたカフェで、お雪とおつうは、お目当てのパンケーキとドリンクのセットをオーダーした。


に来るの、七年振りだよ」

 とおつうが言った。赤いマウンテンパーカーがよく似合っていた。


「もう、そんなになる?」


「そうだよ。お雪の祝言に来たのが最後だもん」


「こっちにいると時間の経つのが早いわ。すぐオバサンになっちゃう」


 同い年のお雪はため息をつき、白いチェスターコートを椅子の背に掛けた。


「お雪は綺麗だよ。前よりもっと綺麗になったよ」


「おつうこそ、いつまでも可愛くて羨ましいわ」


「バツイチですけどお?」


 おつうは唇を尖らす。


「そんなの関係ないよ」


 お雪が笑うと、アールグレイに染めた髪が肩先でふわりと揺れた。

 実はこれで六歳の三つ子を頭に十人の子を持つ母親なのだ。今日は夫とおばあちゃんが子どもたちを見てくれると言うので出掛けてみたものの、いつヘルプコールが来るかわからない。


 そこへ「お待たせいたしました」の声とともに、鼻孔をくすぐる甘やかな香りと幸せな熱量が湯気を上げて二人のテーブルを訪れた。


 きつね色に焼き上げられたパンケーキはふっくりと厚く三層に重なり、一方にはモンブランとガナッシュのアイスが、もう一方にはココナッツとラズベリーのアイスがのせてある。そしてホイップしたての金色のバター。三種類のシロップ。香り豊かなハーブティー。


「うっわああ……美味しそう!」


 最初の一口を頬張った時、お雪のスマホが着信を告げた。

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