第2話 雪女と鶴女房

「ごめんね。外で電話してくる」


 おつうはお茶目に片目を瞑る。二人は幼馴染みであり無二の親友だった。

 ウインドウの外で、スマホを耳に当ててうつむくお雪のうなじは抜けるように白く、その艶やかな色香に、おつうは同性ながらつい目が引き寄せられるのだった。


 戻ってきたお雪は青ざめていた。


「どうしよう。巳之吉みのきちさんが警察に捕まっちゃった」


「なにそれ? なんで?」


「わかんない。ごめん。うち、行かないと」


 お雪は涙ぐみ、指先が震えている。


「誰から電話だったの?」


「おばあちゃん。すぐに警察に行ってくれって」


 店員にわけを話して詫びると、不愉快な顔一つ見せずに二人を気遣ってくれた。

 おつうはお雪を抱えるようにして妖怪専用のワゴンタクシーに乗った。


御伽おとぎ警察けいさつまでお願いします」


 馬の声でいなないたワゴンタクシーは蹄を轟かせてスピードを上げると、人には見えない宙を駆けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る