2話・帰宅

いきなり目の前の少女が泣き出したものだから、御伽は動揺した。

「ちょっ、、ごめんなさい。変なこと言って。謝りますから。なんでもしますから。

泣き止んでください。」

ヤバイ周りの視線が痛いと、御伽は思った。

思ったと同時に聞こえてきたのだ。

「なにあの子、一人でなにを言っているの?」というおばさまの声が。

・・・・?

一人?・・・

あぁそうか。

御伽は気付かされたのだ。


この子は幽霊なんだなと。


御伽は周りのことなど気にせずに、幽霊少女とのコンタクトを図った。

「きみ、幽霊なんだね。」

「見つけ、、て、、、くれて、、、あり、がとう。」

泣きながらなので、途切れ途切れだが幽霊少女はそんなことを言ったのだ。

「ど、どういたしまして?」

意味も分からず、そう返事をした。

幽霊少女はそれからなにも言わなかった。

だから、御伽もなにも喋らなかった。

幽霊少女が泣き止むまで待った。どれくらい時間が経っただろうか。

御伽は電車を乗り降りする人たちから、変な目で見られようが構わずに、泣き止むのを待った。

少女が泣き止んできたタイミングをみて御伽は幽霊少女に対して、

「まず、年齢と名前を教えてくれるかな?」

と問いかけた。

すると幽霊少女は、

「アタシの名前はシバン。13歳。」

返答が来るとは思っていなかったので、御伽は動揺したが、

「そうなんだ。で、なんで泣いていたの?」

「アタシの呪縛を解放してくれたから。」

「??どういう意味?」

「アタシを呪縛から解放する条件は、誰かに見つけてもらうことなの。」

綺麗な青い瞳を赤くしながら、シバンはそう言った。

「呪縛からの解放?」

御伽はその言葉にピンとこなかったので、聞き返した。

「えぇ、アタシみたいな、地縛霊はそこから動けない。

それを俗に呪縛っていうの、霊界ではね。

それで、呪縛から解放する条件を解放条件っていうの。」

続けて

「解放条件っていうのは、地縛霊には必ず1つ以上あるの。

大体は1個や2個らしいの。通りすがりの霊に聞いたところね。」

「へぇ、そうなんだ。で、シバンの解放条件は、人間に見つけてもらうこと?」

「えぇ、そういうこと。」

御伽は思った。

普通、幽霊って自分のやり残したことや、して欲しかったことをしてもらったら、

成仏するものじゃないの?と。

すると、シバンは、

「あなた、アタシは成仏しないの?って思ってるでしょ。

一応言っておくと、成仏する条件とは別なの、解放条件は。」

「そうなんだ。色々あるんだね。

でさ、私はシバンの呪縛を解いたんだよね?」

「えぇそうよ。それがどうかした?」

「とりあえず場所変えない?」

もうすぐ、御伽の家の最寄駅に向かう最後の電車が出発しようとしていた。







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