1話・出会い

見えちゃう系少女・隠岐乃御伽はいつも通り学校に向かっていた。

彼女にとっては、いつも通りなのだが彼女以外の人間にとっては普通ではない。

何故なら

人とは言えない、簡単にいうならゾンビのような霊がたまに歩いていたり、

電柱に身を隠しながらこちらの様子を伺ってくる顔が真っ青な子供が、「タスケテ」

と助けを乞うてきたり、街行く人の足首に手がしがみついていたり・・・・

まぁそんなところだ。

でも彼女は生まれて16年ずっとこの調子なので、特に何か思うこともなく、学校に向かうのだ。




だが、今日は違った。

どこから違うと言えば、

まず、御伽が乗り過ごしてしまったところからだ。

理由は簡単、寝過ごしたからだ。

御伽は寝過ごしたものはしょうがないと、反対のホームに目をやったときだった。

そこには、太陽の光に輝く銀髪の、そして透けるような色の白い肌を持った少女が立っていたのだ。

同い年くらいだろうか。幼いがどこか色気のある顔立ちだった。

御伽はあまりの美しさに口をぽかんと開けて、その少女を見つめ続けた。

すると、その少女は、御伽の視線に気づいたのか、ジェスチャーで、

私のことが見えているの?と言わんばかりの動きをした。

その時、御伽は違和感を持った。

あれだけ前で美少女が荒ぶっているのに、誰も全く反応を見せないのだ。

その違和感が拭えないまま、乗る予定の電車が来たので、それに乗って学校に向かった。





学校に着くまでも、着いてからも、終了の鐘が鳴ってもなお、御伽は上の空だった。

あの美少女が頭から離れないのだ。

彼女は一体誰なのか。

あのジェスチャーの意味は一体何なのだろうか。

だとか。

御伽はそんなことをを考えながら、帰りの電車を待っていたのだが、

ふと、彼女にもう一度会いたい、いや彼女にもう一度会わねばならないと思った。

それが何故かと聞かれれば、そう思ったからとしか言いようがなかった。

御伽は走って反対のホームに留まっている電車に駆け込んだ。

そのまま電車が出発するのを待った。

2分後ぐらいに電車は出発した。

終点に着くまでやけに長く感じた。

たった5駅ほどしかないはずなのに。

終点に近づくにつれ、緊張が高まってくる。

すると

「終点~終点~。この駅でご乗車の皆様はお降りになってください。」

車内アナウンスが終わりしばらくすると、電車の扉が開いた。

御伽は電車を降りるや否や、駅のホームを確認した。

するといたのだ、朝に出会った少女が、全く立つ位置を変えずに。

御伽は、とっさに声をかけてしまった。

しかも、声をかけた内容が最悪だった。

「君、かわうぃーね。ラインやってる?」

完全にやらかした。

アホだ。

隠岐乃御伽は完全なるアホだった。

しかし、少女の反応は、御伽の予想とは反するものだった。

いきなり泣き出したのだ。









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