友情の果てに
__好きな人は、真似したくなる、演じたくなる。
4PV
副題 それは友愛か、狂愛か、自己愛か
大変、遅刻遅刻!
私は宇曽井 誠、dywb27-/hsi2:¥'才!
今日は友達と出かける約束があったんだけど、起きたらこんな時間だったの! 私ってとんだドジっ子ね!
急いで着替えて、食パン一斤加えて走ってたら、曲がり角で勢いよくぶつかっちゃった!
謝ろうとしたら、ぶつかった相手は「肩車して後ろ向きに乗り2本のゴボウを持った歌舞伎顔の男が弱点だ!」とか言ってるし、近くの塀に書かれてる寄せ書きには「どうせみんないなくなる」とか書いてあるし、
私、一体どうなっちゃうの!?
次回、宇曽井死す! デュエルスタンバイ!
#####
面白い事があったので私小説を書いていた筈ですが、どうやらシショウセツはシショウセツでも死小説を書いていたようです。しかし、死小説なんて言葉はおそらく存在しないでしょうし、そもそも私の小説で人が死ぬのはいつもの事でした。亡くなった皆様、ご冥福をお祈りいたします。実在しませんし、誰もモデルになんぞしていませんが。
さて。長らくお待たせいたしました。前置きはもう終わりましょう。使えるネタが尽きました。
ここまで駄文を読んでくださり、誠に有難う御座います。そして、これから駄文をお見せする事になり、誠に申し訳御座いません。
では、どうぞ。
@@@@@@
「巳浦さんって、百舌さんと問題があった人?」
偶然出た名前によってそんな会話が始まったのは、あるショッピングモールのカフェにて。私が、友人の匙田と話していた時だった。
匙田の問いに私は頷く。巳浦も百舌も、私の小学校からの友人であり、どちらも今でも仲の良い相手だ。
「何であんなに仲が悪いんだろうね」
「あー……それは、ねェ」
私は思いの外動く口を抑え、周囲に気を配る。普段の私は、痴人の愛の主人公並みの君子であり、嘘を嫌い、人の悪口やら噂やらに興味を持たず、何かあっても悪くは言わない__そんな阿呆らしいキャラクターを演じていた為、聞かれてしまっては困るのだ。幸いにも、知り合いらしき人はいなかった為、私は声をひそめて話し出した。
「二人とも、小学校の頃は仲が良かったんだ。匙田は、鑿川と仲が良いだろう? あれよりも凄く、なんというか……一心同体? まァ、そんな雰囲気だったね」
鑿川とは、匙田の小学校からの知人だ。私と、仲が良いと言えば良いが悪いと言えば悪い、という、なんとも漫画らしい関係を築いている奴だ。匙田はそいつとかなり仲が良かったが、流石は他人。中学校でクラスが離れてからは疎遠になっていた。最も、鑿川は面倒な性格をしていた為、それも原因の一つかもしれないが。
「面白いくらい一緒にいたね。登校の時も、クラスも、授業中も、休憩の間も。これは聞いた話だけれど、帰ってからも一緒だったようだね。私にそんな奴はいないから、正直気味が悪いとしか思えなかったよ。それを当たり前のようにする百舌も、文句一つ言わない巳浦も、どっちとも気味が悪くて仕方がなかったよ。まァ、それでも私は二人と遊んでいたのだけどね」
しかし、その遊んでいる時にも、百舌は巳浦を独占しようとしていた。それは、ただの友情のようではなく、一種の恋愛的感情が混じっていたのだ、と私は予想している。同性といえど、そういう物はあるだろうから。
私は周囲に注意を配りながら話を続けた。
「でも、中学になってから。四月の終わりに体験入部が終わって、部活を決めただろう? そこで、巳浦が百舌と別の部活に入ろうとしたのだよ」
「入ろうと、した?」
「そう。巳浦は百舌に何部に入るか伝えずに、他の仲良かった人とバスケ部に入ったんだ。いや、伝えていたのかもしれない。百舌は私に、美術部に入る、と言っていたからね」
私は運動が大の苦手であり、人と関係を築くのはその次に苦手な物であったので、正直、入ろうとしていた所に百舌がいるのは有り難かった。それが、どんなに避けていた人物であろうと。しかし。
「しかし。最後に巳浦が油断したんだ。入部届けを出した後、バスケ部に入る事を言ってしまったんだ。幸いにも……いや、不幸にも、その時はまだ、届けを訂正する事ができた」
「でも、百舌さんは美術部にいた気がするよ」
「ああ。バスケ部で頑張ってたようだけれど……言っちゃあ悪いけど、百舌、わりと性格キツいだろう?」
周囲を見る。誰も私達に視線を向けておらず、楽しそうに談話したり、何かの作業をしている。私は思わずため息を漏らした。
「今じゃああれだけれど、昔はもっと酷くてね……しかも、巳浦への独占欲もあった。そのせいで部活で浮いてたらしいのだよ……まァ、本人曰くイジメられていた」
再度周囲を見る。その行動を不審そうに見る匙田を前に、私は当時を思い出して言葉を紡ぐ。
「正直、私は自業自得だと思ったね。でも、普通そんなの認めないだろう? それで、どんどん悪化してね……とうとう、巳浦も敵に回った」
この表現は少しおかしい。巳浦は、初めから百舌の敵であった。部活に入る前にも、入った後にも、私は巳浦から百舌に関する愚痴を聞いていた。いや、本当の事を言おう。私は、小学校の頃から、それを聞いていたのだ。そして同時に、百舌から、本人が自覚していない歪んだ友情の事も知っていた。だから私は、百舌自身の愛情も、それによる独占欲の強さも、巳浦の本心も、それによるすれ違いも、全て知った上で舞台を観客席から見ていたのだ。しかし、これは、今話すべき事ではない。私はぬるくなった珈琲を一口飲んだ。
「それが秋頃、だね。文化祭には、百舌は美術部として出てないから。だからクリスマス前かなァ……百舌が美術部に来たのは」
百舌の歪んだ友情は行き場を失い、
「だから百舌さんは今、唯咲さんと仲が良いんだね」
そう。私は前述の通り、人と関係を築く事が苦手だ。故にか、私は百舌から情報を殆ど全て貰った後、逃走したのだ。それを始めたのが三月の頭。そして、百舌が唯咲という美術部の同級生と仲良くなったのも同時期だ。百舌の歪んだ友情もその頃にはまともになっており、二人はどこからどう見ても普通の友人であった。
「……ああ。そうだね」
「それでも、なんで百舌さんと巳浦さんは険悪なままなの?」
匙田の問いに、少し考えてから口を開く。
「これは予想だけれど。巳浦が二年の時に一年間、留学したからかな。百舌が抜けた後、バスケ部でちょっと着いて行けなくなったらしくてね。あいつ、父親がイギリス人でさ。それだから、父親の仕事もあったし、イギリス行ってたんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
「謝る事ないまま、空白期間が続いたから……だから、険悪なままなんだろうねェ。中身は似てるのにさ」
「似てるの?」
「ああ、うん。犬が好きな所とか、男っぽい所とか、青色が好きな所とか……あと、絵が上手い所とか。個人的に、それは百舌が巳浦の事が好きで、真似してたんじゃあないかな、って思うんだ」
好きな人は真似したくなる、演じたくなる。そして、その人の癖を自分の癖にしてしまう__こういった事を、私はどこかで聞いた事がある。きっと、百舌は意図的に真似ていたり、巳浦の癖が移ってしまったりしたのだろう。そう疑える所はいくらでもあったのだから。もしかすると、私が小学校の頃に二人を気味が悪いと思ったのは、同じ人が二人いるように思えたから、なのかもしれない。それは、自分の事すら完璧に把握できない私にとって、推測でしかないのだが。
静かな空気が流れる。私はおもむろに手にしたスマホの画面を匙田に見せた。
「この店、アカウントをフォローすればクーポン貰えるみたい。どっかにQRコードない?」
そのまま私達は、机の隅にあったそれを読み込み、百舌と巳浦の話を遠く彼方に追いやって行った。
#####
「それで? 君が、百舌さんと巳浦さんを殺した理由にはならないだろう?」
私は肩をすくめるしかなかった。だって、理由はもう既に言っているのだもの。
「はぁ…………君。喋らないと、分からないだろう。どうなんだ? え?」
「ですから、理由はもう言いましたよ。普段の私は、痴人の愛の主人公並みの君子であり、嘘を嫌い、人の悪口やら噂やらに興味を持たず、何かあっても悪くは言わない__そんな阿呆らしいキャラクターを演じているのですから」
中年の男は、またため息を吐くと背もたれに体重をかけた。ギィと嫌な音がパイプ椅子から鳴る。
「しっかし、君。百舌さんと巳浦さんは、その……恋人同士、だったらしいじゃあないか。仲が悪かった二人がまた仲良くなって、嬉しくなかったのかい?」
「おかしな事を言いますね__」
その時の男の顔は、忘れようにも忘れられない。それ程にも、男の顔は驚いていて、面白かった。
私はニッコリと笑って__しかし、私は笑う事が下手である為、おそらく引き攣っているだろう__、できるだけ努めて明るい声で言った。
「__それだから殺したのです。二人が、同性か異性かは関係なく、恋人同士でしたので、私は殺したのです」
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