食べさせないで下さーい!
「うーん……この野菜はあまり美味しくないですね。」
「この野菜は美味しいですよ。ノートに記しましょう。」
ある日のじゃぱりとしょかん。グルメで賢い博士と助手は、ただいまじゃぱりまんの畑からちょいちょいしてきた野菜の研究中。色とりどりの野菜に博士と助手は交互に「じゅるり」と言う。
「だんだん数が減ってきたのです。」
「美味しい野菜はノートにまとめたのでまたちょいしに行きましょうよ。」
「そうですね助手……あ、とうとう最後の1つですね。緑色の野菜……」
「何でしょうか?……ふむ、本によると『ピーマン』という野菜らしいです……」
残った最後の1つはピーマン。博士と助手はピーマンを手に取りじーっと見つめる。
「食べますか。博士。」
「そうですね助手。いただきますです。」
2人はピーマンにかじりついた。博士と助手がピーマンを噛み始めた次の瞬間。
「苦ーーーい!」
博士の声がしんりんちほー中にこだました。
「苦いのです!こんなの病みつきになる奴の頭はおかしいのです!」
助手も『苦い』と言い出した。水を飲んでも食感が残っているようで、それを思い出してはまた水を飲む。
「水を飲んでも美味しくならない……何ですかこれは!」
「『栄養たっぷり』とは書いてありますがそんなの嘘です!」
「でもこれで『ピーマンが不味い』と分かったのです!」
「口直しにかばんにピーマンのないカレーを作らせるです!」
博士と助手は外に出てさばんなちほー方面に飛んだ。
しばらくしてしんりんちほーの空に、かばんを抱えた博士とサーバルを抱えた助手が見えてきた。
「ありがとうございます!では降ろして下さい。カレーを作ります!」
「楽しみです。早くよこすです。」
博士は急降下し、かばんを降ろした。
助手とサーバルも降りた。
「かばんちゃん手伝うよー!」
サーバルが行ったのを確認し、博士と助手がひそひそ話を始める。
「……我々は賢いので、かばんにはピーマン嫌いは秘密にしていますが……」
「まあピーマンを使ったカレーなんてないでしょう。」
「そうですね助手。ピーマン入りカレーなんて本に載ってるわけ……」
「『たくさん野菜カレー』か……『ピーマン』がいて……あ、あった!なんか欠けてる気がするけど……まあいっか。サーバルちゃん!外に出るよ!」
「はーい!」
「かばんとサーバルが外に出たらしいです。」
「火にかける所ですか。少し様子を見に行きますか。」
博士と助手はかばんとサーバルがいる方向へ歩み出した。
「かばん?様子を見にきたですよ。」
「何を入れたですか?」
かばんは材料の名前を1つ1つ言いながら火をつけた。博士と助手はそれを遠くで聞いてた。そして最後の野菜の名前を聞いた途端、博士と助手は絶句した。
「……後は『ピーマン』……でしょうか?」
「「……」」
「どうしたんですか?」
「えっと、火!火が嫌なだけです!」
「とっとと終わらせるです!」
「え?あ、はい……」
博士と助手は、サーバルとかばんがいない所でまたひそひそ話を始めた。
「絶対ピーマンが置きっぱなしだったのが原因ですね!」
「食べかけなのに気にしなかったですか……?」
「しかもピーマン入りカレーが本に載ってたのも原因です!」
「色々不運が重なりましたね……」
その時、かばんが大きな声で
「出来ましたよー!」
と言った。
「ははははい!今行くです!」
「カレー大好きー!ですー!」
変な喋り方だな、とかばんは思ったが、博士と助手は賢いから、自分にも分からない何かだろうと気にしなかった。
「「うっ……」」
カレーの中に入ってる緑色に博士と助手はためらった。
「あの……これは我々だけで食べるので、お前らは帰って……」
「えぇ、でも僕は博士さんと助手さんの嬉しい顔が見たくて……」
その優しさを無駄にしてはいけないがピーマンが嫌だから無駄にしたい……でもかばんが可哀想……
「まあ!いただきますです!」
「はい!そうでしょうか!」
助手の日本語が変なのにやっぱりかばんは引っかかった。
……博士がいただきますと言ってから1分が経った。
「……いつになったら食べるの?もしかして食べれないの?」
「そそそそんなことないじゃないですか!」
「た、食べれるのです!我々はグルメなので!」
「じゃあ早く食べなよ!」
「じゃあ奥の手を使いましょう……」
かばんはスプーンを手に取りピーマン入りカレーをすくって……
「あーん」
……これは食べるしかありません。博士は助手に
「私が死んだら長は任せるです」
とだけ言うとピーマン入りカレーを食べた。
しばらくして博士は叫び出した。それは『苦い』ではなく……
「美味しーーーい!」
助手はその言葉を聞いて耳を疑った。
「はい、助手さんも!」
助手のスプーンでカレーをすくってまたあーんする。
助手も食べたが、助手は驚いた。
「ピーマンが入ってるのに美味しいのです!スプーンが進むです!」
「へ?ピーマン?」
急に進んでたスプーンが止まる。
「あ……しまった、です。」
「博士……すみません……」
「……成る程、ピーマンが嫌い……ということでしょうか?そして欠けていたピーマン。あなた達は生のピーマンを食べて嫌いになったのですね?」
「「はい……」」
「嫌いなものなんて味を消してしまえばいいんですよ。他の料理と一緒に食べるなりして……そうすれば苦い栄養も美味しく食べれていいのでは?」
「「……!」」
「……かばん、ありがとうございますです。」
「嫌いなものも全てカレーで挑戦するです。我々はグルメなので。」
自信を取り戻して再びスプーンが進み始めた博士と助手を見て、サーバルとかばんはにっこりと笑った。
それから博士と助手は、研究で分かった苦手な食べ物はカレーに入れて美味しくいただいたのでした。
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