けもフレ短編集(過去作再公開)

あんかけ(あとち)

ばすてきコンビの始まり

さばんなちほー


「みんなみんなアライさんには近づかない方がいいのだ!」


自分の事を『アライさん』と呼ぶ彼女は、自分には近づかない方がいいとみんなに言いふらしていた。


「なんで近づかない方がいいの?」


サーバルは彼女に近づいた。


「アライさんといると怪我するのだ!アライさんは『がいじゅう』なのだ!」


「えー!?そーなのー!?」


「とにかく近づくななのだ!」


「うー……お友達になりたかったのにー……分かったよー……」


「そうなのだ。それでいいのだ。」


こうして彼女は自分からフレンズを遠ざけた。いつも孤独だった。











さばくちほー


「あ~……暇だなぁ~……」


フェネックギツネのフェネックは何もないさばくちほーに退屈してた。ある物としたら、フレンズやフレンズの巣穴、サボテン、たまにあるオアシスだろう。


「あーまたフェネックが退屈してますー!」


スナネコは彼女に言った。


「えー?スナネコは退屈じゃないのー?」


「別に退屈じゃないですよ。さばくちほーは面白場所です!」


「私は退屈だと思うなー。なんかないのー?」


「そういえば、こんな話を聞いた事がありますか?さばんなちほーにいる、いつも望んで独りぼっちなフレンズ……」


「んー?聞いた事ないなー。」


「可哀想です。友達フレンズがいないらしいですよ。」


「……」




すくっ




「どこ行くですか?」


「暇だからねー。その娘に会いに行くよー。」


「気をつけて。」


そしてフェネックはさばんなちほーへと旅立った。











じゃんぐるちほー


「こっちで合ってるかなー?」




ガサガサッ




タッ




「わー。」


彼女は驚く事があってもあまり動じない。


「ん?見かけない顔。」


「あー、どうもー、フェネックだよー。」


「私はフォッサ。尻尾が大きいだろー?」


「私だって耳が大きいよー。」


フェネックの耳は放熱の為にある。だからじゃんぐるちほーでも平気なのかもしれない。


「ところでーさばんなちほーってどっちだっけー?」


「あ、私知ってるよ。案内してあげる。」


「おー。ありがとー。」




「この辺でいいかな?」


「いいよー。じゃあねー。」


「ばいばーい!」


彼女はついにさばんなちほーに着いた。











さばんなちほー


「さーてどこに行こうかなー……まー適当に歩いてればいるかー。」


彼女はのんびりした性格である。


「うわーーー!」


「んー?」




ドサッ




「痛たたた……なんであいつは追い掛けて来るのだ……アライさんに近寄るななのだ……ブツブツ」


「大丈夫ー?」


「うわっ!アライさんに近寄るななのだ!」


アライさんはとっさに木に隠れた。


「あーこの娘かー。なんで近寄っちゃ駄目なの?」


「アライさんは『がいじゅう』だから近づくと怪我するのだ!……もう誰も傷つけたくないのだー!」


「……」




てくてく




「なっ!?聞こえなかったのか!?来るな!来るななのだーーー!」


「傷つけてみてよ。」


「……へ?」


「聞こえなかったのー?私意外とタフでさ、さばくちほーでも生きられるんだ。アライさんなんて余裕だよー」


「な……じゃあやってやるのだ!アライさんの危なさを教えてやるのだ!」




アライさんはフェネックの手に触れた。そしてアライさんは初めて感じた。


「……お前、温かいのだ。」


「ほら、大丈夫でしょー?」


「お、お前、名前は……」


「フェネックだよー」


「フェネック……ありがとうなのだ……フェネックのお陰でずっと忘れてたアライさんの『手の感覚の鋭さ』を思い出せたのだ。」


「そんなー。私は普通のフレンズだよー。」


「……へ?じゃあ、タフってのは……」


「嘘じゃないけどさばくちほーで生きられるだけのタフだからねー。」


「じゃ、じゃあ、もし、もしなのだ。アライさんが本当に危なくてフェネックが怪我してたら……」


「そんなの承知で試したんだよー。誰かの役に立ってみたくてさ。なんて……」


「フ……フェ……フェネックーーー!」




ぎゅーーーっ




「……例え『害獣』でも、それはアライさんの『個性』だよ。」


「うわあぁぁ……アライさっっん……うっ……はっ、これからっ、自信を持って生きるのだ!」


「……その意気だよー。アライさーん。」


アライさんの泣き声はさばんなちほー中にこだました。アライさんはみんなの温かさを忘れてすっかり冷めてしまっていた。が、またこうして温かさを思い出せた。




「……じゃあ、フェネック、バイバイなのだ。」


「あ、最後に1つだけー。」


「何なのだ?」


「それでもアライさんが心配だよー。ついていっていーかなー?」


「!?」


「あー駄目だったらいいよー。」


「全っっっ然大丈夫なのだー!」


「じゃあ、自信を持って!最初はどこに行くのかなー?」


「あそこに行ってみるのだーーー!」


「あー。元気すぎて明後日の方向に全力疾走しちゃったねー。ちょっと待ってよアライさーん」





あれから数年後、この2匹(正確には、パークのみんな+この2匹)はパークの危機を見事解決した。そして色んなフレンズが歌うという大会が開催された。その時アライさんはこう歌ったのである。




『フェネックはいつも助けてくれる』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る