第5話 ウハウハ
約束まで残り10分俺は、小走りで校門へと向かった。疲れも溜まっていたけど関係ない、彼女に早く会いたいという欲は、疲れより俺の心を揺さぶるのだからな。
そして校門が見えてきた。
そこには1人の女の子が立っていた。
薄暗くなっていたが、俺が間違える事は絶対にないだろう・・・あれは、リリシアさんだ!!!
俺は、嬉しくてつい小走りを速くしてしまった。
そして俺に気づいたらしくリリシアさんは、手を振って合図をしてくれた。そして笑顔でこう言った。
「お疲れ様です!先輩!さぁ一緒にかえりまょう!!」
その笑顔を見るだけで疲れなんてぶっ飛んだよ。今はもう、体力全回復だよ。それは、まるで天使の魔法みたいだなと不意に思った。
そして俺は、勇気を出して言った。
「あぁ、帰ろっか。リリシアさんの家の方から先に行こうか、俺の家はあとからでもいいよ、どうせ自転車だしね」
俺の今出来る精一杯の優しさを出した。
「ありがとうございます!先輩て体か大きいのに、優しいですね!」
「そうか?なんか照れるね」
そう言って俺とリリシアさんは、歩き出した。
俺は、自転車の籠(かご)に荷物を入れてから自転車を押しながら帰った。そうしないといけないことぐらい俺にだってわかっていた。
俺は、この帰り道で彼女との関係が少しでも進展させたいと思っていた。
帰り道――
緊張で自転車を持つ手が手汗で濡れてきた。こんな事がバレたら「キモい・・・」と思われてはいけないので、俺は持っている手を換えて手汗を制服でゴシゴシと拭いた。
「何してるんですか?」
ギグっ!!!!
バレたくなかったのに・・・・・・俺は、昼休みと同じように必死に言い訳をまた考え始めた。
・・・・・・・・・ダメだ!!思い浮かばない!!
なんでだろう?菊池の前だとすぐに三つ思い浮かんだのにリリシアさんの前だと、何にも浮かばない。俺の思考力が部活の疲れで働かなくなったのか、リリシアさんが俺に思考力を低下させる何かをしたのか、分からないが、ひとつ言える事は、俺は今人生で一番緊張しているという事だ。
俺は、なんてかっこ悪いんだろう・・・・・・
好きな子を前にして、今の所何一つかっこいい事が出来ていない。リリシアさんは、なんでこんな俺と「一緒に帰ろう」と言ってくれたのだろうか?全然分かんない。
「あっ、もしかしてちょっと緊張してたりするんですか?」
彼女には、俺の心が全部筒抜けらしい。
「う、うんちょっとね。俺普段女子と話さないからね(可愛い子なんて特に)」
何とも情けない話である。最後にクラスの女子と話した記憶は、配り物のプリントを後ろに回す時に「はい」ぐらいしか思い浮かばない。部活では、そこそこ話せるけど、それとこれとは、話が別なのです。
説明するのなら、ホームアウェイて感じで、教室はアウェイで、部活はホームという事です。こんな人は、多いと思ってる。
「なんて言うか、すぐに緊張しちゃうんだよね」
こんな事を言ってなんになる、ただ自分がダメな奴だと言っいるだけじゃないかよ。
そう、俺はいつもこうだった。
好きな子がいても何も出来ずにいて、たまに話すことが出来ても話す話題がなくて、今と同じように自分をけなす話題をしてしまう。
そしてその子が誰かと付き合い出したら、「あいつは、ビッチだ」とけなしている。
なんて最低な奴なんだよ俺は・・・・・・・・・
こんな事を、リリシアさんと帰っている時には、考えたくなかったが考えてしまった。
リリシアさんは今どんな気持ちなんだろうか?多分俺と帰るんじゃなかったと思ってるんだろうな・・・・・・
何が進展させたいだ馬鹿野郎・・・
俺は、心の中で自分にそう言った。
「先輩どうしました?だまり込んで?お腹でも痛いんですか?」
「うわっ!」
「先輩!?」
急に話しかけられて、不意に声を上げてしまった。
「いや何でもないよ!ちょっと考え事してただけだよ、部活の事とか・・・(本当は君のことだけど・・・)」
「そうなんですか?何考えてたんですか?」
ええーっ!
「どうしたら、速く泳げるかとか、次のレースどうしようかとか、かなー」
スポーツマンが言いそうな事を言ってみた。嘘だけどね。
「へー、凄いですね!私は、スポーツとかはあんまりした事ないんですよねー、特に水泳は、苦手で・・・・・・だから泳げる先輩は、凄いと思いますよ!」
「そうかな―」
「そうですよ!だって考えて見てくだい!自分が死ぬかもしれない環境下で自由に体を動かせるて凄いと思いませんか!?」
自分が死ぬかもしれない環境下?そんな事考えたこと無かったな。
「うーん、確かにそうかもね」
「わーい!分かってもらえて嬉しいです!」
俺は喜ぶリリシアさんの顔が見れて嬉しいです。
ここで俺は、勇気を出して自分から話題を持ち出した。もう、くよくよするのは止めだ。気持ちの浮き沈みがいつもより多い日だ。
「リリシアさんは、部活とかに入らないの?」
「んー、私は入らないですね」
「どうして?」
「だってー、自由に活動したいんですよね」
「そうかー本とか読むから、文学部とか入ってるかと思った」
「文学部て小説を執筆(しっぴつ)とかするじゃないですか?」
「うん、するね」
「私は、書くより読みたい派なんですよね」
チャンス!!俺も本は、結構読むから共通の趣味を持っているてことで仲良くなれるかもしれない!!ラノベだけど・・・
「俺も結構本を読むんだよね」
「そうなんですか!!意外ですね!!」
よし!なんとか共通の趣味の話に入れそうだ!
俺は内心ガッツポーズをしていた。
「リリシアさんは、どんなジャンルの本を読むの?」
俺は、頑張って自然を装って聞いた。その時点で自然ではないけど・・・・・・
「うーん、そうですね〜、好きなのは、『罪と罰』、『白鯨』、『戦争と平和』とかですかね。他にも色々読みますかね」
・・・・・・全然分からん。
罪と罰?白鯨?戦争と平和?なんだそれ?題名だけなら知っているけど話の内容は、全く知らない。知ろうともした事ない。
俺の読んだことのある本は大概(たいがい)がラノベで、他にはスポーツの為の自己啓発本や、漫画しか読んだ事がない。
俺はなんとか話を続けようと頑張ってみた。
「あー、うんうん、白鯨ね、罪と罰ね面白いよね。あれは傑作だよね!」
その反応は、彼女の目にどう映ったのだろうか。凄い気になる。俺は、内心ビクビクしながら大きく頷いた。
「ですよね!でも今挙げたのは西洋の文学なんですよ。日本文学だったら『舞姫』、『こころ』、『細雪』なんかも好きですね」
「舞姫面白いよね!最後は、悲しいけど、いい文学作品だと思ったよ」
現代文の授業を初めてやってて良かったと思った。俺の文学の知識は、基本現代文の時間しか文学を学ぶ機会なんてほとんどない。ちなみに古典は毎回赤点ぎりぎりになっている。
「眞さんは、どんな本を読むんですか?」
予想は付いていたけど、いざ質問されたらなんて答えたらいいか分かんないな。いや、分かんないと言うよりも何を言ったらいいか迷ってる。
・・・・・・もうどうでもいいや自分の好きな本を言おう。それで嫌われたら終わりだけどもし彼女と付き合えたら、避けては通れない道だ。今の内にやっておいてもいいだろう。
俺は捨て身の覚悟で口を開けた。
「えーと、俺が好きなのはラノベて言われているもの全般かな」
言ってしまった。背中にゾクリと何かが走っていった。
「ラノベ!?なんですかそれ?私はラノベて言われてるものを全く読んだことないから、わからないけど面白いんですか?」
おや?意外と食いついてきたようだ。とりあえず、彼女の問いに答えよう。
「ラノベは、面白いよ!凄っい面白いよ!なんて言うか、自分の知らない世界が色々広がっていてその世界を旅してる感じかな・・それと、自分の想像もつかないような世界が本を開けば広がっているてすごいと思わない?」
つい、ラノベについて熱く語ってしまった。
「おおー!なんか凄いですね!!」
「でしょ!!でしょ!!」
「私は、家にある本をずっと読んでいたんで最近の本は、全然知らないんですよね。先輩の言っていたラノベも」
「そうなんだ」
「1度読んでみたいですね」
今なんて言った?彼女の口からラノベが読みたいて聞こえた、これは、もう貸してあげるしかないな。それしかないな。
「じゃあ明日オススメのラノベを持ってこようか?」
「いいんですか!?」
いいに決まってるでしょうが!!
「全然いいよ」
「じゃあ明日持って来るよ」
「ありがとうございます」
そう言って彼女は、笑顔でこっちを向いてくれた。
俺はその笑顔に勝てる気がしなかった。それはこの先ずっとだろうな・・・。自分で言うのもなんだが、ちょろい男だと思った。
「じゃあ、明日の昼休みに貸してもらってもいいですか?」
「了解。明日の昼休みに持っていくよ」
「私は、あの交差点で曲がります。先輩は?」
「俺はそのまままっすぐだよ」
もうそろそろこの楽しい時間も終わってしまうと考えると名残惜しいと思ってしまうな。彼女ともっと一緒に居たい。それが今の頭の中の全てだ。
「先輩!」
「はい!何でしょう!」
思わず、後輩なのに敬語を使ってしまった。それほど何にも考えてなかったんだろうな。
「今日は、ありがとうございました。転校して間もなかった私に優しくして下さってありがとうございます。もし良かったら今度も一緒に帰ってくれますか?」
その言葉を聞いた俺は、鳥肌が立っていた。それと同時に自然と口が動いていった。
「じゃ、じゃあ、明日からも一緒にかえろうよ」
脱ヘタレに一歩近ずいたような気分だった。もう一押ししてみることにしてみよう。
「そうだ、今度一緒に本屋に行ってみようよ。そしたらお互いに好きな本がよくわかるしね」
「・・・・・・」
少しの間返事がなかった。もしかして、やらかしてしまったか・・・・・・
その間は、10秒ぐらいしかなかったけど、とても長く感じた。
「すっ、すいません!少し考え事をしてたんで・・・・・・あの、こちらこそよろしくお願いします。それに先輩の読んでる本に興味がありますしね。明日の本も楽しみです!」
この日から俺とリリシアさんは、一緒に帰り始めた。その時間は、毎日楽しくて楽しくてたまらなかった。部活でいくら疲れてても関係なかった。彼女と一緒に帰れると思ったら自然に口角が上がっていた。
そしてついに明日は一緒に行く日だ。
土曜日の夜―――
向こうにそんな気があるかは、分からないがこれは、デートだと思ってる。だからめっちゃ緊張してる。
初めて女の子(しかも美少女)と出かけるとなるとそれなりの格好じゃないと駄目だろうから、凄い明日着ていく服を悩んでいる。
俺は、基本服にこだわりがないのででジャージでどこでも行ける人間だ。て言うかこんな田舎でおしゃれしてても無駄でしかないと思っていた。今はそんな自分を呪い殺したいと思っている。
とりあえず服は決まってこれから寝ようと思ったけど、全然眠くならない。興奮して眠気が吹っ飛んでんだろうな。
ベット上で悶えること2時間ようやく寝れた。時刻は、午前3時明日は7時に起きる。計4時間しか寝れないのか・・・・・・
明日は寝不足で最悪の条件だ。しかし俺は、彼女必ず楽しませうと誓った。
だけど明日事件は起きた。
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