第3話 メカ子
「これが例のアンドロイドかい。五体満足とはいえ、錆びてボロボロだね」
今日は午後からオフだったそうで、メカ子は直ぐに私の自宅兼アトリエへと駆けつけてくれた。服装は仕事着のデニム地のツナギのままだけど、プライベートな場なので、ラフにツナギの上半分を腰で結び、上半身にはネックの深い、ライトグレーのカットソーを着用している。
メカ子は学生時代からの友人で、私の自宅兼アトリエと彼女の自宅兼職場が近所なこともあり、社会人となった今でも交流を続けている。
メカ子はアンドロイド専門のメカニックだ。元は大手企業に勤務していたのだが、数年前に独立。現在はフリーランスのメカニックとして活躍している。
専門的なことは私にはよく分からないけど、彼女の技術力はとても高く、若手ながら業界では一目置かれる存在とのこと。私の交友関係の中でアンドロイドについて相談するなら、彼女を置いて他にいない。
メカ子というのはもちろん本名ではなく愛称だ。
メカニック志望の女の子でメカ子。
何とも安直なネーミングであるが、彼女自身が気に入ったこともあり、学生時代にはメカ子呼びが完全に定着。今でもプライベートな場では、私は彼女をメカ子と呼んでいる。
「あたしの記憶する限り、こんなアンドロイドは見たことがないな。少なくとも今現在、市場に流通している物でないことは間違いない」
「つまり、どういうこと?」
「製品化に至らなかった
「他に何か分かることは?」
「漂流によるダメージを抜きにしても、元から経年劣化していたような印象を受ける。それなりに古い型なのかも――」
メカ子が言い終える前に、不意にアンドロイドが音声を発した。
「ウツツシ――!#$%&@*――ダス――ヒトミミミ――@*+?!#」
「……本当に君のお母様にそっくりの声だね」
学生時代からの友人であるメカ子は、当然母さんとも面識がある。
初めて聞くアンドロイドの音声に、目を丸くして素で驚いている。
「君が興味を抱くのも当然だね。あたしもこの子の正体が気になって来た。出来る限りの協力はさせてもらうよ」
「ありがとう、メカ子」
「メンテナンス用の端末を繋いで解析してみるよ。ただ、海を漂流していたようだし、電子回路その他諸々、内部を浸食で大きく損傷している可能性は高い。上手く情報を拾えるといいけど」
渋面でそう言うと、メカ子はアンドロイドのメンテナンス用のタブレット端末を取り出し、持参してきた有線ケーブルで端末とアンドロイドとを繋いだ。
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