第26話
一階につくと、驚くことに病院内で一匹のゾンビが暴れていた。どうやらバリケードを突破したようだ。
暴れているゾンビは小柄な女性だった。
「あのゾンビ……小柄な女性だから上手くバリケードの隙間をくぐり抜けたのね」
恭子が冷静に状況を判断する。ゾンビは周りの人を威嚇して今にも飛びかかろうとしていた。
「文太郎くん、銃であのゾンビ撃てないの?」
「だめだ、これだけ人がいると流れ弾が病院内の人に当たってしまう可能性があるよ」
文太郎がどうすればいいのか悩んでいると、女ゾンビが近くにいる女性を襲おうとしていた。女性はドクターコートを着ている、どうやらこの病院の女医のようだ。女医は恐ろしさのあまり腰を抜かしていた。
女医の後ろから一人の男が飛び出してきた。
「お袋! 大丈夫か!」
飛び出してきた男は池澤だった。女ゾンビに襲われそうな女医は池澤の母親のようだ。池澤は母親の前に立つと女ゾンビに向かっていく。
池澤がジャブを繰り出す。その攻撃が女ゾンビに全てヒットした。女ゾンビはガムシャラにパンチを繰り出すが池澤は軽く交わしている。そして右ストレートが女ゾンビの顔面に入ると続けざまにパンチを繰り出しそれも全てヒットした。
「ふん! ちょろいもんだ」
池澤はさらに何度も女ゾンビに打撃を与えた。池澤のパンチが当たるたびに「ドゴン」と凄まじい衝撃音が聞こえ女ゾンビが後ろに吹っ飛ぶ。
「すごい……」
文太郎は池澤の凄まじいパンチ力に驚いていた。しかし、女ゾンビは何度、吹っ飛ばされてもすぐに立ち上がり池澤に向かっていった。そのことにだんだんと池澤は苛立ち始めた。
「くそ! こいつ!」
池澤は女ゾンビにアッパーをぶち当てさらに右のストレートを顔面に食らわすと女ゾンビはまた吹っ飛ぶ、そしてすぐに立ち上がるが今度は一旦、動きを止め池澤を唸り声で威嚇した。
それをチャンスとみた池澤は前に出て右左のパンチを繰り出した。
パンチは女ゾンビの顔面に当たる。が、しかし池澤の体力に限界がきていたようであまりパンチにあまり威力がない。女ゾンビは、今度は後ろに吹っ飛ばず前へ突進してきた。そして、女ゾンビがパンチを繰り出すと池澤の顔面にモロに当たった。
今度は池澤が吹っ飛ぶとすかさず女ゾンビは馬乗りになり何度も池澤の顔面を殴りつける。池澤は両腕で顔面をガードしているが、だんだんと腕のガードの隙間を女ゾンビのパンチがかいくぐる。
「や、やめ……」
池澤の顔面は血で染まる。池澤は絶望していた、腕に全く力が入らない。それに意識もだんだんと薄れ始めた。そして女ゾンビは口を開け牙をむき出しにし池澤に噛み付こうとしていた。
(もうだめだ)
池澤が諦めたその瞬間、突如、女ゾンビが吹っ飛んだ。誰かが女ゾンビに蹴りを入れ吹っ飛ばしたのだ。池澤は自分を助けてくれたその人物の顔を見ようとしたが、天井のライトが眩しくてよく見えなかった。
「だ、だれ……」
池澤は助けてくれた人物に声をかけた。その声には聞き覚えがある。
「池澤、大丈夫か? 立てるか?」
池澤がその人の肩に手を掛け立ち上がると、やっと顔を見ることができた。驚いたことにその人物は伊達だった。
「お、お前は、伊達……」
「池澤、動けるか? 少し下がってくれ、このゾンビは俺がやる」
「な……む、無理だ。俺ですら勝てなかったんだぞ、お前に勝てる相手じゃない! やめろ……殺されちまうぞ」
池澤が顔面を抑えながら文太郎が女ゾンビに向かって行くのと止めようとした。
「大丈夫、勝てるよ。さっき池澤とあのゾンビの戦いを見てわかった。こいつらには弱点がある」
「なに!」
池澤は信じられないといった表情で文太郎を見た。文太郎の表情は自信に満ちていて化け物に対する恐怖心などまったく感じられなかった。池澤は文太郎の言葉に半信半疑ながらも言われた通り後ろに下がった。
女ゾンビが立ち上がると今度は文太郎に威嚇するように唸り声をあげる、しばらく唸り声を上げていた女ゾンビだったが、突如、文太郎めがけて走り出した。しかしそれと同時に文太郎も女ゾンビに向かって走り出していた。
ゾンビアウト 黒咲 @kawa2
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