第43話 スカウト(後半)

 前回の続きです。


 東條とうじょう かなで先輩

 生徒会副会長

 今ワタクシ、このヤバい先輩と生徒会室に2人きりです。


「まあ、襲う云々は半分冗談として」

「半分本気かよ!」


 この先輩、ワタクシを生徒会に入れたいそうです。

 色々バグってる感じだけど、頭大丈夫?


「生徒会も色んな要素が必要なんだよ。会長みたいに堅いのばっかりじゃ回んないしね?」

 あれで堅いのか⁉

 ウチの生徒会マジで大丈夫か⁉

「先輩みたいなのばっかでもエライ事になりそうですけど」

「言うねぇ」


 先輩が立ち上がってこっちにやってくる。

「こはるんは前から気になってたんだよ、柚原さんの一件あたりからね」

 あー……

 そういえば、チャラ男隊相手にちょっと大騒ぎしたなぁ。


「あれは痛快だったね、あはははは!相手巻き込むのに自分のブラウス引きちぎる痴女!あはははは!バカがいるバカがいる!もう最高過ぎて草生える!」

 先輩が私の隣に座ってゲラゲラ笑いながら私をバンバン叩く。


 ひーひー言いながら涙目の先輩

 笑いすぎでしょ!


「あの時はお騒がせしました」

 とりあえず殊勝に謝っとこう。

 先輩、ひーひー言いながら涙拭いて答えてきました。

「うん、やり方は間違いだったねぇ。でもアイツ達ホントにクソだったじゃん」

「やり過ぎたのは反省してますって、はぁ……」

「気に入ったのは行動した事だよ。柚原さんとはその時は特に仲良かったわけでもなかったんでしょ?」

 グイっと先輩が覗き込んでくる。

「ま、今はイイ感じの仲みたいだけどね?」


 先輩!顔近い顔近い!

 ワタクシ真っ赤になってます。


「先輩絶対からかってますよね⁉」

「いやいや、半分本気で勧誘してるよ?」

「半分冗談か⁉」

 先輩が私の太ももに跨ってきました。

 おい!

 さすがにこの姿勢はまずいだろ!


「先輩!マジヤバいでしょこれ⁉」

「あはっ、こはるんのリアクション可愛い~から襲っちゃうかな?」

「アンタ処女でしょ⁉」

「女の子と経験が無いとは誰も言ってない」


 ちょっとこの先輩、ガチでヤバくない?


「あはは……冗談……ですよね?」

「どうかなぁ?」

 悪戯っぽい笑顔で覗き込んできます。

「身長小っちゃいけど、胸はこはるんも満足してもらえると思うんですけどぉ」

「女の子と経験が無いとは誰も言ってないけど、有るとも言ってないですよね⁉」

「さてどうかなぁ?経験なくても女の子同士、気持ちのいい所は知ってるし」

「いやいやいや!生徒会室でキマシタワー建てたらマズいっしょ!」

「マズいかなぁ?試そうか?」


 先輩がゆっくり体を下げて私の太ももに座ってくる。

 先輩のお尻がぴとっと太ももに触れる。

 マジかこの人!


 と思ったら……パッと床に飛び降りる。

「なんてね?うっそぉ~」


 私は真っ赤になって聞きます。

「何がしたいんすか?はぁ……」

「ゴメンゴメン、ちょっとふざけ過ぎたね」

 先輩が向かい側のソファーに座り直す。

「改めて生徒会手伝ってくんない?最初は庶務扱いくらいで……急がないから考えといてよ」

「はぁ、まあ考えときますけど……多分やらないですよ?」

「えー?こはるん来ないんなら、むっつりスケベ会長と一緒に襲っちゃうぞ♡」


 すぱこーん!

 副会長、いつの間にか帰って来ていた会長に後頭部はたかれました!

「橋本、俺は淡白なんでソロ活動は週一回のペースだ。そこの耳年増の下ネタは100%スルーしていいぞ」

 会長!その情報いらないです!


 生徒会室を出るとき、会長に声をかけられた。

「橋本」

「何ですか?会長も『小春』呼びでいいっすよ?」

「俺は童貞の上に年齢=彼女いない歴なんで女子の名前呼び苦手なんだ。『橋本』で勘弁してくれ」

「だからそういう情報いらないです!」

「俺も結構橋本に期待してる。無理強いはしないけどいい返事が欲しいな」

「2人してどうしたんですか?頭バグってません?」

「必要な時にちゃんと一生懸命に動けるってのは、実は貴重な資質なんだよ。不本意ながら俺があの妄想クソビッチを高く評価してるのもそこにある」

「副会長にセクハラで訴えられますよ?」

「こっちがモラハラで訴えてやんよ」

 ホントにウチの生徒会、本気で将来が心配だ!



 

 お姉ちゃん帰ってきたみたいです。

 部屋に行ってみます。

「おかえり、どうだった?」

 お姉ちゃんが生徒会室であった事を話してくれます。


「はぁ……色んな意味で参ったし疲れたわ」

「あはっ、熱烈ラブコールだねぇ?」

「過大評価もいい所だわ、あの2人ぜってえ頭おかしい」

「そう?過小評価だと私思うけどな?」

「へ、どゆこと?」

「それは置いとくとして、お姉ちゃんにしては珍しいね?」

「何が?」

「お姉ちゃんって自分のペースに巻き込んで相手を手のひらで転がすトコあるでしょ?話し聞いてるとさぁ、今日は逆にお姉ちゃんが副会長さんにコロッコロ転がされてるなあって……」

「そんな感じ?」

「うん、そんな感じ」




 次の日の放課後、生徒会室


 コンコン……

「すいません。橋本ですけどぉ……」

「あーどうぞ、入ってよ」


 今日は副会長1人

 会長は相変わらず書類仕事で走り回ってるらしいです。


「昨日の件受けます。よろしくお願いいたします」

「うん、こはるんはそう言ってくれる気がしてた」

「なんも大してできないですよ?」

「ま、パート感覚で週一回位手伝ってよ。携帯持ってる?」

 

 スマホの番号とメアドを交換


「おっけー、頼みがあるときは連絡するね?」

「パートの報酬はこれで」


 むにっ……

 副会長の胸を鷲掴み


 相手はニヤッと笑って……

「高くつくよ?」

「あんまり高くつくなら逃げます」

「んじゃこはるん、改めてよろしく」

 ニッコリ笑って私に鷲掴みされてる胸を指さす副会長

「握手は代わりにこれって事で」


 

 そんな大した人間でないし、生徒会で何ができるかわかんないけど……

 とりあえず、コロッコロ転がされてるままなのは癪だなって事で。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る