第42話 スカウト(前半)

 お昼休み


「やっほ、ちょっと橋本ちゃんいいかな?」

 3年生が私達に話しかけてきた。

「あのー……どっちの橋本ちゃんですか?」

「あ、そかそかゴメン、あねちゃんの方」

「へ?私ですか?」


 明るい栗色の髪をゴムで結ってる元気な感じの人

 ネクタイの色で3年生だってわかったけど……

 165cmの多香子はもちろん、160cmの淳子ちゃん、158cmの私達姉妹や154cmの友香より背の低い先輩

 ひょっとしたら、150cmちょいしかない美鈴ちゃんより低いかも?


「あのー……先輩……失礼ですがどちら様で?」

「ん?覚えてない?」

「いやーすんません、あはは……」

「後夜祭のステージであねちゃんに胸揉まれてダメな性癖の扉を開きそうになった私だよ」

 お姉ちゃん速攻土下座

「大変申し訳ありませんでしたああああああっ!」


 東條とうじょう かなで先輩

 この前は文化祭実行委員の副委員長やってましたが

 なにを隠そう、わが校の生徒会副会長です。

 「企画の会長、実行の副会長」と言われてて、現場第一主義でフットワークの軽い(ノリもだが)副会長として有名です。


「いやいや、怒りにきたんじゃないって。あねちゃん放課後あいてる?」

「まあ、ヒマっちゃヒマっス」

「んじゃ、放課後に生徒会室来てよ」

「へ?何ゆえに?」

「胸揉ませてあげるよ。私のよかったでしょ?」

「いやぁ、かなりの揉みごたえで……って、マジで何なんですか?」

「あははは!あねちゃんやっぱ面白いや。ま、悪いようにはしないし」

「『悪いようにしない』ってのは悪いようにする超巨大フラグっすよ?」

「とにかく来てよ。んじゃ確かにお願いしたからね?よろしくで~す」


 身長伸ばす栄養が胸にいってしまったらしい先輩は、一方的に用事を伝えて帰っちゃいました。


 放課後


 ワタクシ、一生縁のないと思われた生徒会室の前にいます。

 コンコン……

「すいません。2年の橋本ですけどぉ……」

「あーどうぞ、入ってよ」


 中に入ると、生徒会長と副会長が……

「ようこそあねちゃん、まあそこ座って」

「はあ……」

 言われるままにソファーに座ります。

 副会長がコーヒーを入れてくれて、向かい側に……

「副会長の東條とうじょうかなで、改めてよろしくね?あっちでパソコン打ってるのが会長の白幡しろはた 雄太郎ゆうたろう、資料作成がいそがしいんだよね」

 会長がPCの画面を見ながら挨拶してきます。

「会長の白幡だ。忙しいんでこんな挨拶でゴメンな?」

「いえ、お構いなく」


「さてさてあねちゃん」

「姉ちゃんはやめてくださいよぉ……橋本ちゃんも2人いるんで小春でいいですよ」

「んじゃこはるん」

「先輩人の話聞かないタイプっすか?」

「いやー、そういわれたことは生まれて一度もないなぁ」

 嘘つきだなおい!


「こはるん、生徒会に来ない?」

「へ?」

「ゴメン、聞こえなかった?」

「いやいやいや!めっちゃ聞こえてますよ!」

「どう?」

「どうって……どういう事っすか?」

「こはるん、質問に質問で返すのは関心しないなぁ」

「いや、意味わかんないんで!」

 副会長、ワタクシの反応見てニヤニヤしてるみたいです。

 何なんだこの人⁉


「私、赤点常習犯だし、素行もそんな良くはないですよ?」

「自分で言うかなぁ」

「事実です」

「こはるんの成績は求めてないよ。そういう感じが欲しいんだよ」

「へ?ますます意味不なんすけど」

「こはるんの周りってさ、結構笑顔なんだよね」

「あははは、バカの集団なんで」

 副会長が首を横に振る。

「そうかも知んないけど、一番はこはるんが友達に対して何でも一生懸命だからじゃん」


 コーヒーを一口飲んで返答する。

「買いかぶりっしょ、ワタクシそんな立派な人間じゃないっすよ」

「こはるんはもうちょっと自分の評価正しく認識したほうがいいねぇ」

「仮にそうだったとして、そんだけが取り柄の人間が生徒会入ってどうするんですか?」

「友達に対して何でも一生懸命な人間は、生徒会に入ったらみんなに対して何でも一生懸命になるもんなんだよ」

「うげ……貧乏くじですよねそれ」

「まぁまぁ、騙されたと思って協力してよ。生徒会室はコーヒー飲み放題で楽しいよ?この前会長と2人きりの時、ここでえっちしたし♡」

 アンタら何してんだ!


 会長がPCの画面を見ながら言いました。

「橋本、俺は童貞だ。そこの処女の下ネタは100%スルーしていいぞ」

 副会長もヤバイけど、会長もなかなか香ばしいなおい!


 会長が資料をプリントアウトして、資料をもって立ち上がりました。

「生徒会顧問に文化祭の報告出してくる。まだ話するのか?」

「うん、もうちょっと口説いてみる」

「襲うなよ」

「努力はする」


 ホントこの2人なかなか香ばしいなおい!

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