第31話 小春先輩ブーム

 今ウチの高校、ちょっと面白い事になってます。

 1年女子の間でお姉ちゃんが人気なんです。


 きっかけは、階段で転げ落ちるところを助けてあげた後輩


 その王子様(笑)っぷりが1年女子の間に伝わり、第11話での淳子ちゃんの1件(因みにあの時のチャラ男隊は大恥かかされて最近鳴りを潜めてます。ですよねー)なども蒸し返されて……

 今やちょっとした小春先輩ブーム、あははは。


 そのブームの中心人物はウンザリぐったりな感じで机に突っ伏してます。

「どうしてこうなった……」


 靴箱の中に入ってたいくつかのプレゼントやファンレター

「ワタクシ芸能人じゃないし⁉」

 そう言いながらも、捨てないでファンレターに全部目を通してるのがお姉ちゃんらしいのですが……


 お昼休み


「すっげぇ視線感じる……これは私の自意識過剰であってほしい……」

 多香子と友香が茶化します。

「安心しろ、その視線は私達も感じてるから自意識過剰じゃない」

「よっ!人気者!」


 淳子ちゃんはいつも以上にお姉ちゃんにぴとっと張り付いてます。

 危機感?


 お姉ちゃんが美鈴ちゃんに話しかけます。

「後輩ちゃん、ちょっと小雪の自慢話も広めてきてよ。絶対1年生には小雪の方が人気出るって」

「バカなんですか死ぬんですか?なんでわざわざライバルを増やさなきゃならないんですか?全く物事考えてないんですかそうですか」

 美鈴ちゃんが私の太ももを枕にしたまま毒舌を吐いてます。

 ホント美鈴ちゃんはお姉ちゃんにだけは容赦ないなー。


 友香が野次馬根性丸出しで聞いてきます。

「ねえねえ小春、ファンレターってどんなこと書いてるの?」

「うー、『カッコいい』とか『凛々しい』とか『お姫様だっこされたい』とか……」

「あははは!女子への褒め言葉じゃねえよ!」

 多香子大笑い。


 お姉ちゃんも反撃します。

「うっせえ!多香子だって陸上部のエースだからって女子に人気あるじゃん!」

「大きなお世話だ!私だって普通に男子のファンが欲しいよ!」

「ボーイッシュ多香子に男子ファンはハードル高すぎでーす。あきらめて友香を嫁にして女子ファンをつまみ食いする王道のガチレズ道を歩むがいいさ!」

「何その修羅の道⁉言っとくけど小春今その状況に片足ツッコんでるからね⁉」

「私はそんな地雷埋まりまくりの道なんて歩かないし!」

「いーや!このままだと『後輩食いの小春』という恥ずかしい2つ名がつくのも時間の問題!いい機会だから妹との近親相姦卒業しろ!」

「内心がダダ下がりしそうな2つ名!あと近親相姦じゃないし!小学校からの腐れ縁を武器にあんな事やそんな事してる奴に言われたくない!」

「どんな事だよ!」


 あのー、お姉ちゃんと多香子……

 私達恥ずかしいから帰っていいかな?


 しばらくこの状況は続きそうです。

 ファンレターもラブレター(もどき?)がちょこちょこ混じってきてます。

『大好きです、付き合ってください』

『柚原先輩みたいに私もカッコよく助けてもらいたいです』

『私じゃ小雪先輩の代わりにはなりませんか?』

『小春先輩なら全部捧げてもいいです』

『新婚旅行は近場だけど鎌倉なんて素敵だと思いませんか?』

 お姉ちゃん頭抱えてます。

 頭痛が酷いんですね?あははは……


 こういうのは空気の問題だしねぇ……

 冷めるまで我慢するしかないのかな?




 ある日の放課後


 小雪は職員室に用事があって、現在ワタクシ独りぼっち。

 淳子が声をかけてきます。

「小春ちゃん、先に校門で小雪ちゃん待ってようよ」

「あー、そうだね」


 失敗しました。

 今、こんな状況だったら好奇の視線にさらされるよな!うん!


「小春先輩と柚原先輩だ」

「やっぱあんな風に助けてもらったら惚れちゃうよね?」

「私もあんなドラマチックな出会いしたい!」

「でも2人って付き合ってるわけじゃないでしょ?」

「んじゃ私もワンチャンある?きゃっ♡」


 あーもう!誰かこの空気なんとかして!


 淳子がきゅっとしがみついてきます。

 ゴメンね?淳子もやだよね、はあ……

「小春ちゃん……」

 不安そうな顔

 多分、誰かにとられる不安感?(いや、ワタクシ淳子のものでもないですが……)

 もう!そんな目でみるな!


「淳子」

「ん?」

「眼鏡取ったら、あんまり見えないんだよね」

「そうだけど、それが?」

「この空気変えちゃおうか?」

「へ?」


 淳子の眼鏡を取って

 淳子を抱き寄せて

 顎クイして

 ちゅっ……


 校門前で、思いっきり恋人っぽいキス!


 淳子はビックリしてましたが、受け入れてくれて手を回してきました。

 2人は学校の中心で幸せなキスを交わしました。

 ゆぅらびゅ~ふぉえ~ばぁ~♪ひ~とぉみぃを~と~じてぇ~♪

 空気クラッシュ!どうだ!




 失敗しました。


 小春先輩ブームは去りましたが……

 今、わが校は「禁断の恋を応援しよう!」ブームになってしまいました。

 もうこの作品のタグ「百合(っぽい?)」から「っぽい?」外さなきゃダメかな?


『二人の恋応援してます』

『ドコまでいってるんですか?』

『世間の風は冷たいけど負けないで!』

『昨日はベッドの中でどんな話したんですか?』

『子供は何人欲しいですか?』

 お姉ちゃん頭抱えてます。

 頭痛が酷いんですね?あははは……



 結論

 空気ってケンカしても勝てません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る