第28話 ちょっと珍しいWコンビで……SideM

土曜日


「やっほ美鈴ちゃん、来たよー」

 私達の通学路の途中にあるマンションの一室

 インターホンに呼びかけると、ガチャっと玄関が開いて美鈴ちゃんが出迎えてくれます。

「いらっしゃいませ、小雪先輩」


 今日はご両親が不在で「誰もいないからゆっくりお泊りしませんか?」とお誘いを受けた。

「おじゃましまーす」

「適当にソファーにでも座って下さい。お茶いれますから」

「ありがと」

 大きなソファーにぼふっと座ります。


 ってか……

 ちょっと美鈴ちゃん

 家でいつもそんな気合入った格好してるの?

 肩と胸元を大胆に露出した真っ白なミニワンピース(絶対高そう)

 ふともも部分にレースをあしらった白のニーソックス

 いつものツインテも白のレースリボンで……


「どうしました?」

「いや……いつもそんな格好なのかなーって……」

 真っ赤な顔で美鈴ちゃんが答える。

「普段着です」

 絶対それ嘘だよね!


「どうぞ」

 美鈴ちゃんが紅茶を入れてくれた。

 そして、隣に座ってぴとっとくっ付いてきた。

「えーと……」

「どうぞご遠慮なく」

 いや、あのね……

「どうぞご遠慮なく」

 ゴロゴロ……

 でっかい白猫さんが横で喉を鳴らしてます。

 ま……いっか……



 夕食は美鈴ちゃんが朝から準備してたみたいです。

 カレーにミートスパにハンバーグ(目玉焼き付き)

 子供か!!

 多分、美鈴ちゃんの好きなものを全部集めたんでしょう。

 味は普通に美味しいです。

 でもかなり頑張ったんだろうなぁ?

 出来合いやレトルトが一切ないし、朝から必死に食材と戦ってたんだと思います。

 指が絆創膏だらけだしね。可愛い。


「とっても美味しいけど、野菜も食べなきゃだめだよ?」

「いいんです!」

「大きくなれないよ?」

「がるがる……」

 あ、ちょっとだけ怒った。可愛い。


 冷蔵庫にレタスがあったので、適当にちぎって水にさらして……

 チーズを混ぜたスクランブルエッグをレタスの上に……

 そして、胡椒をミルでガリガリと……

 酢とオリーブオイルと砂糖、塩に醤油とすったニンニクをちょいちょい……


「はい、適当にミモザサラダっぽいの」

 でっかい白猫さんは「うえ……」って顔をしかめましたが、一口食べたら気に入ってくれたみたいです。


 後片付けは2人並んで……

 美鈴ちゃんが照れくさそうに言います。

「こ……こうして……並んでたら……夫婦みたい……です」

「んな事ないでしょ」

 どっちかというと、妹と一緒に後片付けしている気分です。

 下手すりゃ娘か?

 私子供産むどころか、した事もないけどね!


 お風呂に入り、リビングでくつろぐ。

 先にお気に入りのパジャマに着替える。

 美鈴ちゃんがお風呂からあがったみたいですね。

 お着換え中かな?


 そして……

 美鈴ちゃんがリビングに……来たけどさ……

「お待たせしました」


 なにその恰好!

 黒いレース地のブラとショーツ

 薄い(色もそうだが、布地もね!)ピンクのべビードール

「なんて恰好してんの⁉」

 真っ赤な顔をして美鈴ちゃんがいう。

「私いつも寝るときこれです」

「絶対それ嘘だよね!痴女だよ!」


 さっきまででっかい白猫さんだった痴女が私に抱きついてくる。

「いやいやいや!マジでダメだよ美鈴ちゃん!」

「小雪先輩……大好きです……」

「先輩として?」

「性的にです」

「予想はしてたけど躊躇なく言ったね⁉」


 とりあえず美鈴ちゃんを身体から放して、ソファーにおっちんさせました。

 真っ赤な顔して座ってます。

「ねえ、どしたの?」

「先輩に……喜んでもらおうと……思って……」

「いやいや、気持ちは嬉しいけど……」

「最近……ちょっとは話せるクラスメイトができたんです……」

 あ、そうなんだ。

 ちょっとはクラスメイトともコミュニケーション取ってるんだね。

 頑張ったね美鈴ちゃん。えらいえらい。

「好きな先輩に……どうしたら振り向いてもらえるかな?……って……」

 美鈴ちゃん……

 その聞き方は大きな誤解を生むね。

「そしたら……『アンタの魅力でメロメロにしちゃえ!』って……」

 友達面白がってるな!絶対!

「で……インターネットで色々調べて……やってみました……」

 それだ!

 全ての元凶はそこで一から十まで間違えたことだ!

 あと倉島家のインターネットセキュリティは改善の余地がありますよ!

 ガバガバです!ご両親!


 はあ、とため息をつく……

 ぽふっと美鈴ちゃんの頭に手を乗せます。

「美鈴ちゃん、変に背伸びしたおもてなしはダメだよ。しかも斜め上方向に間違ってるし」

「でも……」

「んじゃ、私がキスしたいってしてくれるの?」

「と……当然です!」

「ホントに?」


 美鈴ちゃんに顔を近づけ……

 おでこにちゅっ……


「え?えええっ!ふ……ふしゅううううっ……」

 顔真っ赤にしてうずくまっちゃいました。

 でしょ?


 降参した美鈴ちゃんはネコさんパジャマに着替えてきました。

 薄い毛布持ってきて、包まってたわいない話で盛り上がりました。

 美鈴ちゃんに質問するような感じでのおしゃべりでしたが、美鈴ちゃんなりに一杯答えてくれました。

 最近読んでる本

 好きなゲーム

 料理の話

 そして、お姉ちゃんの話

「小雪先輩、小春先輩と仲いいですよね?」

「うん」

「いいなぁ……お姉ちゃんって……」

「うん、楽しいよ」

「(ぼそり……)小春先輩って……ずるい……」

「え?」

「なんでもないです」

 眠くなるまでおしゃべりしてそのままリビングで寝ちゃいました。



 次の日の朝食は私が作りました。

 ご飯にお味噌汁に卵焼き

 まあ、一宿一飯の恩義ってことで。


「おいしい?」

「はい……でも……」

「ん?」

「お味噌汁は、お母さんの方が……美味しいかなって……」

 ニコッと笑ってあげる。

「それでいいんだよ」


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 SideJ(小春と淳子)はこちらです↓

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887977314/episodes/1177354054888734768

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