第16話 陸上部員、頑張ってます!

 桜井さくらい多香子たかこ

 私の大切な友達です。


 ちょっとだけ多香子の紹介をします。


 ボーイッシュでショートカットでスレンダー、ちょっとカッコいい女の子です。

 もう一人の友達、前野まえの友香ゆうかと同じ小学校&中学出身、幼なじみで仲がいいです。


 1年生の時、2人はお姉ちゃんと同じクラスでした。

 傍若無人で天上天下唯我独尊だけどのお姉ちゃんが2人と仲良くなって、お昼休みは4人で過ごすことが多くなりました。

(今は淳子ちゃんも一緒ですが。)


 放課後は、陸上部で短距離やってます。



 今日は陸上部の選手選考会です。

 私とお姉ちゃん、友香と淳子ちゃん、4人で応援してます。

「短距離選手候補って2年生は多香子だけなんだね?エ〇マ〇ガ先生」

「反省してます小春様!だからその呼び方やめて!」

 私も先回の件では友香に怒ってましたが、もう反省してるので許してあげました。

 でもまだお姉ちゃんは先回の件を許せないようです。

 単に「こんな美味しいイジりネタはまだまだしゃぶりつくすぜ!」的なものだと思いますが……

「その身が朽ちるまで反省するがいいさ。淫乱ピンク髪R18同人娘」

「混ぜすぎ!」


「2年は多香子だけみたいだね?3年の先輩に交じってやりづらそう……」

「小雪がチアの格好して応援したらいいじゃん」

「誰得⁉」

「男子」

「私達多香子の応援で間違いないよね⁉」

「ピンクのパンツ思いっきり見せてチアしたら、多分多香子もやる気マンマン」

 真っ赤になって涙目でこのバカ姉に襲い掛かったら、みんなに阻止されました。


「お、始まるよ100m」

「多香子がんばーっ!」

 ぱあんっ!

 スタートのピストルが鳴り響きました。


「がんばれーっ!」

「負けんなあーっ!」

 ほとんど横一線

 真ん中あたりで2人くらいが飛び出してきました。

 多香子は後続組です。

「巻き返せえっ!多香子ー!」

「もう少しーっ!がんばれーっ!」

 ゴール!

 1&2フィニッシュはぶっちぎり。

 多香子を含む後続組は横一直線に見えました。

 ハッキリ言って、誰が3着だったのか解りません。

 私には、多香子が3着に見えましたが……


 次の日


「いやー、ごめんね?ダメだったぁ」

 2位までが選手、3位が補欠に……

 多香子は4位だったそうです。

「残念だったね」

「ま、勝負の世界は厳しいってことだね」

 多香子がにへっと苦笑いしました。


 上履きに履き替えてそれぞれの教室に行きましたが、何故かお姉ちゃんはクラスの違う多香子を追いかけました。


「ちょいちょい、多香子待ってよ」

「ん?どしたの小春」

「というかさぁ、どしたの多香子?」

「は?意味不明なんですけど。どゆこと?」

「なんかあった?なんとなく辛そうだし」

「あ……」

 そうです。

 小春はこういう時、なぜか敏感なんです。


「小春はバカのくせに、こういう時だけ感がいいよね?」

「お前の大平原、前から鷲掴みしようか?」

「それは普通にやめて」

「やっぱいつもと違う。調子変だし」

 

 多香子わたしは降参して、小春に心の中を吐露しました。


「昨日の選考会、私3着だったんだ」

「え?4着だから選考漏れたんじゃなかったっけ?」

「ほぼ同着だったしね。3年生は今年最後だからって先輩が選ばれた」

「それ酷すぎ!……とは言えないかぁ……」

「んだね。僅差で勝ったんだし、私が選んでもそうするかなって……」

「んで、多香子は納得できなくてモヤモヤしてると?」

「納得はしてるよ。でも……」

「でも?」

「感情はねぇ……やっぱさぁ……」



 お昼休み


 陸上部の100mトラックにお姉ちゃんと多香子がいます。

 私と友香と淳子ちゃんは、意味不明のままそれを見ています。


「なんでこーゆー事になるかな⁉」

 陸上部のユニフォームを着た多香子がお姉ちゃんに食って掛かります。

「いーじゃん、青春ぽくって」

 お姉ちゃんは、体操服にハーパン

 合うシューズがないので裸足です。

 どこの動物園から逃げてきたのでしょうか?


「小雪ぃ。スタートお願い」

「何1つ理解できてないんですけど」

「まあまあ、よーいドンしてくれりゃOKだし」

「はいはい、それじゃ位置について」

 多香子はクラウチングスタートで

 お姉ちゃんはスタンディングで

「よーい……」

 多香子の腰がグッと上がります。

「スタート!」


 結果は多香子の大勝利です。当たり前だ。

「はあっ……はあ……はあ……」

「やっぱ速いなぁ……はあ……はあっ……」

「当たり前だっての!お前バカか⁉」

 お姉ちゃんがにかっと笑いました。

「やっと多香子らしくなった」


 多香子が汗を拭きながらため息をつきます。

「はあ……なんなのこの茶番……」

「しぇーしゅんだなぁ。モヤモヤの元忘れた?」

「バカなの死ぬの⁉どんだけ私の脳みそ雑なの⁉」

 ふう……とため息をついて……

「でも……モヤモヤしてんのがバカらしくなったかな?」

「そいつはよかった」

「今度は私もみんなも納得するタイム出せるように頑張るし」

「おう、それでこそ私の惚れた多香子だぜ」

「いつそういう設定になった⁉」

「でも身体は許しても、心はあの人のものだから……」

「何処からツッコもうか⁉」

「ごめんね多香子」

「いつのまにか自動的にフラれてる私!」


「多香子、お姉ちゃん」

 新しいタオルを持っていきます。

「早く汗ふいてお昼食べようよ。着替える時間無くなっちゃうよ?」

「んだね。とっとと食べよ」

 汗を拭きながら、多香子がお姉ちゃんを見て言いました。

「やっぱコイツ、だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る