第12話 新しい友達

 ウチのクラスに柚原ゆずはら淳子じゅんこって子がいます。

 先回、ヒドい目に会いました。

 チャラ男達に女心を弄ばれたのです。

 そのチャラ男達は、お姉ちゃんに天誅を下されました。

 天誅の内容は大問題ですが、ツッコむと負けなのでスルーします。


 その柚原さんが、お姉ちゃんの所にお礼に来ました。

「こ……この前は、ありがとう……橋本さん」

「ん?いーっていーって。柚原さんも大変だったねぇ」

「ごめんなさい……私のために……」

「いーよ。アイツらあんまりにも女子舐めすぎだし。それに友達がヒドい目に合ってるってのも……ねぇ?」

 柚原さんは真っ赤になっちゃいました。

「と……友達?」

「ま、クラスメイトだし」

 柚原さんは真っ赤ですが、とっても嬉しそうです。

 お姉ちゃんの雑な脳みそも、今回はいい方向に働きました。

「そ……それじゃ……私の事……『淳子』って呼んでもらってもいいかな?」

「いいよ。こっちも『小春』でいいし、『橋本さん』2人いるから」

「うん。ありがとう、小春ちゃん」

「よろしく淳子」


 それから柚原さんは、少しずつですがお姉ちゃんとお話しするようになりました。

 たまにお昼ご飯も一緒に食べるようになりました。

 大きな3つ編み、眼鏡で大人しいと地味な要素満載ですが、柚原さんはとってもいい子です。


「あ……あの……小春ちゃん……」

「ん?どしたし?」

「今度の土曜日……私のウチ来ない?この前のお礼……というか……」

「ん?別にお礼なんていいよ。」

「私の焼いたケーキとか……食べてもらいたいかな……って……小春ちゃんが……イヤじゃなかったら……」

「行く!行きます!淳子の焼いたケーキ食べたい!」

 ウチの長女は簡単に毒殺されるタイプです。

 将来が心配です。


 日曜日


「こんにちわー、淳子」

「いらっしゃい、小春ちゃん」

「おっきな家だねー、すごい……」

「お父さんもお母さんも儲けてるし……今日もお仕事だしね」

「この巨大な家に1人?マジか!お嬢様か⁉」

「だから小春ちゃんが来てくれて嬉しかったんだ」

「そっか。そういう事なら遠慮なくお邪魔させてもらうね?」

「どうぞ」


 淳子の焼いたケーキと紅茶は最高です。

「んー!うめえ!」

「よかったぁ……そこまで喜んでくれたら嬉しいな」

「いやマジすごいって。お金取れるよこれ!」

「キッチンが大きいから……スチームコンベクションオーブンとかもあるし。」

「そのなんとかオーブン天才だな⁉」

「ふふっ、やっぱり小春ちゃんて面白いね」


「隣に座っていいかな?小春ちゃん」

「ん?いいよ……ってかココ淳子ん家じゃん。私に遠慮するのおかしいって」

「じゃないんだけどな……」

 淳子が私の隣に座りました。

「小春ちゃんて可愛いよね?」

「そう?淳子だって可愛いじゃん」

 淳子が真っ赤になりました。

「そんな……みんなに地味子って言われてるの知ってるし」

「うん、私も言ってた」

「それ本人の前で言うかなぁ?地味にダメージある……」

「でも友達になってから近くで見るようになったし。淳子って目もぱっちりしてるし、編んでる髪もツヤツヤで綺麗」


 淳子わたしは更に顔が熱くなりました。

 ああ……

 いいなあ。

 嘘っぽい空っぽのお世辞ではない言葉……

 やっぱり小春ちゃんていいなあ……


「小春ちゃん……」

「ん?どしたし?」

「私……こんなんだし……友達いなくて……」

「今は私も小雪も多香子も友香もいるじゃん」

「そうだね、ありがとう」


「小春ちゃん……」

「ん?」

「好き……」

「は?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る