第6話 ヘタレ

 今日も無事1日が終わりました。

 お姉ちゃんはお昼休みに又訳の判んない事を言って周りをひっかきまわしていましたが、いつもの事です。

 とにかく無事1日が終わりました。


 靴箱の所に行きました。

 さっさと靴を履き替えましたが、珍しくお姉ちゃんがモタモタしてます。

 って言うか……フリーズしてる?

「何してるの?」

「これ……」

 靴箱の中に、白い封筒が入ってました。

「炭そ菌とかついてないよね?」

「お姉ちゃんテロの標的になる心当たりあるの⁉」

「爆弾かな?」

「すごい技術!」

「そこらへんにドッキリのプラカード持った奴いない?」

「現実見ようよ!」


 家に帰って、お姉ちゃんの部屋に……

「ってか、何で私連れ込まれてるの⁉」

「こんな危険物……1人で見る勇気がない……」

「相手に失礼だよ。ちゃんと1人で中身を見て想いに応えてあげなきゃ」

「見捨てないでよぉ……小雪ぃ……」

 ヘタレキャラになり下がったお姉ちゃんをとっとと見捨てて、自分の部屋に帰りました。


「ん……とりあえず開けよ……」

 封筒を切って、中身を出しました。

「まあ、スマホの番号勝手に聞いてショートメールで送りつけて来るようなバカよりよっぽど誠意感じられるけどさ・・・」


*********

 初めまして

 2年C組の高坂こうさか孝俊たかとしと言います。

 好きです。

 とりあえず気持ちを伝えたかったので、手紙にしました。

 返事は急ぎません。

 応えてくれると嬉しいです。

                  橋本小春様

*********


 うわ……こいつ乙女だな……


 2年C組の高坂孝俊……


 知っている。

 結構イケメンで、真面目な感じ。

 バスケ部でレギュラーで、ちょっと目立ってる。

 女子の話でもよく話題になる。

 正直、私も高坂クンっていいなと思った事がある。

 でもなぁ……


 次の朝

「うわ……お姉ちゃん……やつれてるし……」

「寝不足気味……」

「ラブレターの件?」

「うん」

「どうするの?」

「返事は急ぎませんって書いてたから」

「んー……」

「何?」

「なんかお姉ちゃんらしくない」

「そう?」


 それから1週間

「お姉ちゃん、1週間保留ってちょっとヘタレすぎない?」

「そう言わないでよぉ……」

「イヤならお断りすればいいじゃん。相手だって可哀想だし失礼だよ」

「イヤってわけじゃ……」

「へ?イヤじゃないの?」

「まあ……高坂クンっていいなと思った事があるし……」

「んじゃ尚更早く返事した方がいいでしょ⁉」

「でもさあ……心の準備とかさぁ……」


 あーもう……

 なんとなく腹が立ってきた……

 お姉ちゃんは良くも悪くも、こんなウジウジした性格じゃない。


「そんなの……なんか違う!」

「へ?え……ええっ?」

「お姉ちゃんは思った通りに暴走すればいいじゃん!でしょ⁉」

「…………」

「それがお姉ちゃんだよっ!今のお姉ちゃん大っ嫌い!」

「…………」

 バタンッ!とドアを閉めて、お姉ちゃんの部屋を出ていきました。


 次の朝

「うわ……お姉ちゃん……やつれてるし……」

「寝不足気味……」

「ラブレターの件?」

「うん、ほぼ徹夜で返事書いた」

「そっかあ」

「まだそういうのはいいかなって」

「お断りしちゃうの?高坂クンって結構イイ感じって言ってたじゃん」

「ふっふっふ……結構『逃がした魚は大きい』感はあるぜ……」

「んじゃ書き直して付き合えばいいじゃん!」


 いきなりお姉ちゃんがヘッドロックしてきました。

「だーかーらー!まだそういうのはいいかなって!ねっ!」

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」


 なんとなく嬉しかったです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る