第2話 ネコまっしぐら

 お昼を食べ終わり、中庭のベンチでまったりしています。


「んー……いい天気だね」

「気持ちいいね、お姉ちゃん」

「私の名前のようないい天気、んー、いいねっ」

「あの……お姉ちゃん……小春日和は春の天気じゃないよ?」

「な……なんだってー!」

「むしろ知らなかったのにビックリだよ!」

「この4月でこの世に生を受けて17年、今一番驚愕してる……」

「そこまで⁉」


 大きな樹が中庭の真ん中にあるのですが、みんなが集まってザワザワ騒いでます。

「何だろ?」

「行ってみる?」

 野次馬の方に寄っていき、近くのクラスメイトに尋ねました。

「どしたし?」

「あー、ネコが樹に登ったまま、降りられなくなってるんだって。」

 上を見ると、子猫を卒業するかしないかぐらいのネコが、枝の上で固まってます。

「あー……あれくらいのネコちゃん、一番やんちゃだしねぇ。」

「どうしたもんだかね……」


「はいはい!脚立様のお通りだよ!道を開けな!」

 いつの間にか消えたお姉ちゃんが脚立を持って来ました。

 我が姉ながら、必要のない行動力の高さはすごいです。

「用務員さんから一番高い脚立借りてきた。ネコ救出だ!」

 脚立をネコちゃんの下にセッティングしました。


「さあ!準備は出来た!誰かネコネコ姫を救う勇者はおらぬか?」

 シーン……

「あるぇ?誰もいない?」

「お姉ちゃんが助けるんじゃないの?」

「いや、脚立持ってきただけだよ。セッティングしたら誰かやってくれるかなって。」

「他力本願すぎ!」

「んじゃ私支えとくから、小雪Let's Go」

「ヤダ、こんな高い脚立怖いし」

「がっちり掴んどくから大丈夫!」

「女子の力じゃ無理でしょ?あとスカートの中見えちゃうじゃん」

「今日の小雪はピンクのチェックだって知ってるから今更見ないし」

 真っ赤になって涙目でこのバカ姉に襲い掛かったら、みんなに阻止されました。


「んじゃ、私が登るし。男子脚立支えてよ」

「お姉ちゃん恥ずかしくないの?」

 お姉ちゃんはビッ!と空を指さし、大声で叫びました!

「私のはブルーのストライプだああああああっ!」

「お姉ちゃんイカれた!」

「先に宣言しておけばみんなワザワザ見ないよ」

「逆に確認されちゃうよ⁉」


 お姉ちゃんはスカートを抑えながら登っていきます。

 男子たちは必死に上を見ないようにして支えてます。

 なんだこの微妙な空気?


 頂上到着

 お姉ちゃんは右手で枝をつかみ、左手を伸ばしてネコネコ姫を……

「救出成功!」

「「「おおおおおおおおおおっ!」」」」

 なんだこの変な空気?


「よーしよしよし。今降りるからねぇ……」

 左手でネコネコ姫を持ちながら、そーっと……

「ヤバ……意外に片手で降りるのムズい……」

 片足ずつ確実に脚立を足にとらえて、一段ずつ……

 あと1m位か?慎重に慎重に……


 ずるっ!

「うわあああっ!」

 お姉ちゃんが足を踏み外しました。

「まずいっ!」

 慌てて左手をあげて、ネコネコ姫を庇います。

「「「おおおっ!」」」

 脚立を抑えてた男子たちが、倒れてくるお姉ちゃんを受け止めようと必死に……

 どすんっ!


「…………」

「…………」

「「「…………」」」

 もみくちゃになった感はありますが、男子たちがクッションになったおかげで、お姉ちゃんは尻もちを着いただけで助かりました。

 ただしパンツは丸見えです。

 まあ、命あっての物種。よかったね。

 掲げた左手には、硬直したネコネコ姫も握られています。無事です。

「姫をお助けしたぞー!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」

 なんだこの変な盛り上がり?


 後にこの1件は、「レスキューオペレーション・ストライプブルー」として、レジェンドとなりました。

 あと、ネコネコ姫は、男の子でした。

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