昔話 蛇神様と蛙達⑤
元気を取り戻した蛙達は、川の近くにあるという里を探して、再び歩き始めました。
里はすぐに見つかりました。いくつもの民家が建ち並び、人が忙しなく行き交っています。
初めて見た大勢の人間達に、蛙達は尻込みしてしまいました。
「にんげん、いっぱい!」
「どうする? どうする?」
「とりあえず、かくれとこ!」
「だめ! へびがみさまとやくそくした!」
「じゃあどうするの?」
蛙達は里から子供を連れてくる代表者を決めることにしました。問題は代表者を決める方法です。
まず、相撲で負けた者が代表者になるという案が出ました。しかしそれでは弱い者が里へ行くことになるので、却下されました。
では、相撲で勝った者が代表者になることにしよう、と相撲を取ることになったのですが、みんな行きたくないので、わざと負ける者が続出し、勝負になりませんでした。
結局、推薦された5匹の蛙が代表者になり、里から子供を連れてくることになりました。彼らが子供を連れて戻ってくるまで、他の蛙達は龍澄川のほとりで待っていることにしました。
5匹の蛙達は連れ出せそうな子供を探して、里中を練り歩きました。しかしその里は小さな里だったので、見知らぬ顔の蛙達は里の人達から物珍しそうに見られていました。
「お前達、どっから来たんだい? 迷子かい?」
しばらく歩いていると、里のおじさんが心配そうに声をかけてきました。
蛙達は怯えながらも、普通の人間の子供のフリをすることにしました。
「ちがうちがう」
「ぼくたち、あそびあいてをさがしにきた」
「ぼくらのむら、こどもすくない」
「だから、あたらしいともだちがほしい」
「だれかいいこ、いないですか?」
里のおじさんは片言で話す蛙達を訝しく思いながらも、「それなら大川さんのところの子と遊んでくれるかい?」と、ある子供を紹介しました。
「あの子、地主の息子だからって、里の子供達から仲間外れにされていてね。俺もたまに川釣りに連れて行ったりしてやってるんだが、やっぱり同じ年頃の子と遊ぶ方が楽しいんじゃないかと思ってな」
「そのこはふとっちょですか?」
「あぁ、太っちょだとも。毎日贅沢な料理ばかり食べるらしいからな」
蛙達はこの少年を連れ出そうと決めました。
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