昔話 蛇神様と蛙達④

対岸へ渡りきった蛙達にもう怖いものはありません。仲良く連れ立って草原を歩いていきました。

 しばらくすると、清竜川とは別の、大きな川が見えてきました。龍澄川に到着したのです。

 それはとても美しい川でした。清竜川よりも幅が広く、底が深いのに、川底に沈んでいる小石が1つ1つはっきりと見えるほど澄んでいて、清竜川では見た事のない虫や生き物が沢山住んでいました。

「なんてこと……」

「すっごいきれー……」

「せーりゅーがわ、くらべものにならない」

蛙達が試しに水を一口飲んでみると、夏の水とは思えないほど冷たく、とても美味でした。

「おいしー」

「いきかえるー」

「かわのみずって、こんなだったっけ?」

龍澄川の美しさに蛙達は心打たれました。同時に、かつて自分達の住処だった清竜川のことを思い出し、うつむきました。

「ぼくたち、これでよかったのかな」

「せーりゅーがわ、みすてたとおなじ」

「だよね……」

みんなが落ち込む中、少年の姿をした1匹が「しかたなかったんだよ」と明るく言いました。

「ぼくらのこってても、かわきれーにできない。きっとへびたちにくわれておわりだった。それなら、べつのとこでしあわせにくらしたほうが、まし!」

彼の言葉に、他の蛙達も頷きました。

「そうだな」

「おまえのいうとーりだ」

「はやいとこ、へびがみさまのおつかい、すませましょー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る