第一七四話 アスセナ女王の秘密? 前編
帝国歴二六七年 青玉月(九月)
ロアレス帝国の寄港地へ焼き討ち作戦は成功し、混乱の最中に突入した親エルウィン家の部族連合軍によって、寄港地は陥落。
結果として重鎮ルーシラ公爵の嫡男デレックス・ルーシラは戦死。
その他投降した兵士たちも殺され、破壊された寄港地に埋められた。
なんでそうなったかって言うと、寄港地攻略に遅れを取った一部の部族が、降伏した連中を手柄にしようと襲ったからだ。
まぁ、でも、そんなのは武功として大っぴらに言えるものではないので、やった連中は部族内でも白眼視されている。
俺としては、南部諸部族が絶対にロアレス帝国に靡かないための最期の一歩を踏み切ってくれたので、よくやったと部族を褒めてやりたいが、それはできないわけで、彼らの処理は新女王の就任式典で行うことにした。
「アルベルト―、アスセナたんの衣装はもっとこう、煽情的なやつがよいのじゃぞ。えっちなやつで男どもを従える方がこうグッとくるというかなんというか」
ロダ部族の集落に到着し、アスセナの実家に間借りしている俺たちは、明日の式典に着る衣装の選定を行っている最中だった。
ふむ、マリーダの言うことにも一理あるか……。
アスセナは神秘性を持つ女王様って感じで売り出すつもりだし、えっちな衣装はありかもしれんな。
「リシェール、別の衣装に変えてくれ。マリーダ様の要望を入れておいて」
「はーい。アスセナさん、こちらへ」
「あ、はい」
先ほどから完全に着せ替え人形扱いのアスセナだが、プロポーションはいいので、何を着ても威厳と神秘性を両立させている子だった。
しばらくして、奥の部屋から出てきたアスセナは、マリーダの要望に沿った煽情的な衣装を着ている。
マリーダのいつも着てる衣装に似てる気が……。
あれよりもさらに布地の面積が少ない感じだが。
「おぉ! よいのじゃ! 妾の好みの衣装じゃぞ。じゃが、細部は確認せねばならんのじゃ!」
アスセナの背後に立ったマリーダは、衣装をチェックするふりをして、セクハラを実行する。
「よいのぅ。むちむちぷりんぷりんでよいのじゃぞ。アスセナはよい身体付きじゃからのぅ。男どもはこの姿を見たらひれ伏すのは間違いなしじゃ!」
「マリーダ様には気に入ってもらえたようですね。アルベルト様はどうでしょうか? 私に似合っておりますか?」
マリーダのセクハラをものともせず、アスセナは自らの衣装の感想を俺に求めてくる。
たしかにむちむちぷりんぷりんで、エッチな衣装を着てくれるのは破壊力が高い。
でも、いつもこの衣装はいろんな意味で危ない気がするので、式典だけ、特に国家の式典の時だけに限定した方がいいな。
アスセナは女王になった後は、国家運営を新エルウィン家が多数を占める部族会議に一任し、同盟者のマリーダの居城アシュレイ城で過ごすことになっているしな。
実質、人質ってわけだが、本人は嫁入りだと思ってるし、俺もマリーダもそう思ってる。
アスセナと俺との子は、ロダ神聖部族同盟国の次期王だしね。
山の民と南部諸部族を従えたエルウィン家は、エランシア帝国でも辺境伯家としてかなりの力を持つことになるはずだ。
そこそこお金がかかってるわけだが、ロダ神聖部族同盟国が国家として成長すれば、回収できない額でもないし、わりと産物の宝庫っぽいとの報告も上がってきているので、落ち着いたら確認はしておきたい。
「あの? アルベルト様、お気に召しませんか? もっと、肌が出る方が好みでしょうか?」
思考の沼にハマっていた俺の目の前にアスセナの顔が突如現れた。
「いや、似合っているが――。俺としては独り占めしたいので、その衣装は式典の時と新年の挨拶の時だけかなー。もったいない。もったいない」
とりあえず、えっちなアスセナの姿に手を合わせて拝んでおいた。
ありがたやー。ありがたやー。えっちな子は大好物です。
「なるほど、これは年一回だけの特別な衣装にしときますか。でも、アシュレイにいる時は着た方がいいでしょうか?」
アスセナの質問に、俺は首を縦に振って応えた。
マリーダも腕を組んで、俺と同じように首を縦に振っていた。
「承りました」
「アスセナ様も意外と積極的ですねー。アルベルト様の視線はその衣装に釘付けですよー。あー、あと気を付けないとマリーダ様に――」
鼻息荒いマリーダが、リシェールと話していたアスセナを攫って、寝室の奥へと神速の動きで消え去った。
「攫われてしまいますよーって言えませんでしたね」
奥の寝室からはマリーダの声とアスセナの声が聞こえてくる。
あまりに煽情的過ぎて、性欲大将軍の我慢が限界だったようだ。
「言えなかったね。まぁ、式典の前だしほどほどにしておかないとね。リシェール、ちょっとマリーダ様をこらしめてくるとしようか」
俺はリシェールに意味深な視線を送る。
「承知しました。最近は外征中ということもあり、自由にされておりますからね。しっかりと立場を自覚してもらった方がよいでしょうね」
リシェールが妖しい笑みを浮かべて答えた。
俺たちは、マリーダたちが入った寝室に入ると、その日は夜遅くまでいろいろとご指導することになった。
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